全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-52 環境問題ときもの(その9)
私は、染屋さん織屋さんには、良い物を創っていただきたいと思っている。伝統的な技術を駆使し、またそれを発展させて日本の伝統工芸としての染物織物を創って頂きたい。
染屋さん織屋さんも自分の持てる技術で良い製品を世に問いたいのだろうと思う。しかし、昨今の染屋織屋さんは、安価に製造し、小売価格をより高くできるような製品づくりをさせられている様に思える。あらぬ付加価値を付け、易い製品を造り、それを高額で販売すると言った手法である。これらは染屋織屋などの生産者の欲するところではあるまい。
生産者が、その技術の粋を尽くして製品を創り、その製品が正しい流通経路で消費者に届くとすれば、価格はそれ程高い物ではない。そういう流通経路が確立されたならば、生産者は安心して物創りに励むことができる。そして、消費者は、愛着を持てる製品を長く着用する事ができる。良い物を長く使えると言う、正に環境にやさしい着物ならではのすばらしさである。
現在のねじ曲がった着物の流通経路をどうすれば正すことができるのだろうか。
まずは小売屋が、商品にあらぬ付加価値を付けることや消費者を騙すような行為は慎まなければならない。そして、小売屋は商品を見定めて買い取り、そして販売する事である。 同じように問屋は生産者より商品を買い取って小売屋に納める。
いずれも現在の小売屋や問屋にとってとてもハードルが高いことかもしれないが、やらなければならない。昔は皆そうであった。小売屋も問屋も自分の店で扱う商品には責任を持っていた。問屋の責任としては、安易に小売屋に商品を貸して商売をさせない事であろう。
一方、生産者には良い物を創ると言う責任が付加されることになる。問屋が買い取る商品には、それ相応の品質と価格が求められるからである。
これで消費者に渡る商品は品質が向上し、価格は低下するはずである。
さて、業界としてそのように改革すれば、それで問題が解決されるのかと言えば実はそうではない。私は消費者に大きな責任を感じていただきたいのである。
消費者のトラブルでは、
「呉服屋に入ったら高額な着物を買わせられた。」
「DMの誘いで着物を見に言ったら店員に数時間囲まれ、着物を買ってしまった。」
「無料着付け教室に行ったら着物を買わされた。」
と言うような話が絶えない。中には、同じ人が二度三度同じ目に遭っているケースも見られる。
何故そのような事になるのだろうか。自分が本当に欲しい着物と価格を自覚し、いらない物はいらないと言う。そう言った消費者ばかりであれば、そのような商法に消費者が悩まされることはないだろう。しかし、実際にはそれができないところに業者が隙を見て入り込んでくる。
呉服業界を正常化するには、是非とも消費者の自覚が必要である。環境にやさしい本当の着物を取り戻す為にも消費者の方々には行動していただきたいと思う。