全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-54 「勝者総取り」、呉服業界でも?
先日、ソフトバンクグループが5兆円(正確には4兆9876億円)の利益を出したと言うニュースがあった。日本の企業ではトヨタ自動車が長者番付の常連だが、今年は2兆1977億円の黒字である。その数字は、売上ではなく利益である。どちらも我々には想像もつかない数字である。
トヨタ自動車は、いわばコツコツと自動車の生産に励み、売上を伸ばし世界一の自動車メーカーになった事は知られている。その長い間の努力の甲斐あっての利益と思えるが、ソフトバンクの場合、昨年は1兆円の赤字、そして今年は5兆円の黒字転換である。そして、何を売って儲けているのか、素人には分かり難い。
更に驚くことは、トヨタ自動車の売上が30兆円に対してソフトバンクの売上は5兆6281億円である。ソフトバンクの税引前利益は5兆6704億円。つまりソフトバンクは、売上よりも利益の方が大きい。
我々小売業は、商品を仕入れてマージンを載せて販売し、得た利益から経費を支払う。物を売っているだけでは、利益が売上を上回ることなど絶対にない。
更に驚く事には、それ程利益を出しているソフトバンクグループの株価が急落し、三日間で時価総額6兆円を失ったと言う。
余りにも巨大な数字が乱高下して何が何だか分からないが、からくりはいたって簡単である。物を売り買いして利益を揚げるのではなく、保有していた株式の評価が上がり含み益となったものである。含み益を利益とみなすかどうかは会計基準にもよると思うけれども、現実に株価が値上がりして資産が増えたことは確かである。
我々が「果たして手拭を何枚売れば5兆円の利益を出せるのか。」と言うのとはまるで違った世界である。
昔も一攫千金と言う商売?はあったかもしれないがこれ程ではなかっただろう。今は昔と違うのは、グローバル化、地球規模での情報の共有、流通通信の発達、それらによって世界は狭くなり、国境を越えて情報が行き交い、投資も行われる。
因みにソフトバンクグループの5兆円の利益の内、2兆6千億円は韓国ネット通販の会社であるクーパンの上場に伴う含み益だった。
このような変化をもたらした大きな要因はITの発達である。ITの発達によって世界は、居ながらにして同じ情報を共有できるようになった。その影響は呉服業界にも及んでいる。
つづく