全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-54 「勝者総取り」、呉服業界でも?(その2)
ITに詳しい友人が次の様な話をしていた。
「ある小さな会社が、インターネットで商品を安く販売する事によって急成長して、今は全国一の会社になったのです。そう言う挑戦をしたら良いんじゃないですか。」
そのからくりはこうである。
カタログで品番が特定できる商品を他社よりも一円でも安くWEBに載せる。消費者は、検索によって他社の販売価格は分かるし、価格の比較サイトもある。販売するあらゆる商品を一番 (一円でも) 安くすることによって注文が集まる。注文が集まることによって、スケールメリットを利用して更に安価に多種類の商品を販売する。
消費者は、商品が同であれば一円でも安い店から買おうとする。結局消費者の注文は一円でも安く一番安い店に集中する。WEB上の全てのお店の販売価格が瞬時に閲覧できるとしたら、価格を重視する消費者100人中100人が同じ店から購入する事になる。
送料や納期等の条件もあるけれども、それらが全て他を凌駕するのであれば、消費者は確実にそれになびくだろう。注文は一社に集まり、結果的に「勝者総取り」である。
ITの無かった時代、例えば昭和30年代、商店街で向かい合った雑貨屋さんが同じタワシを扱っていた場合、消費者は安い店から購入する。それと同じである。しかし、当時はタワシの価格を比較するのは向かい合った雑貨屋2軒だけだった。中には隣の商店街まで足を延ばす奥様もいたかもしれないが、それでも比較範囲は限定される。
現在はITによって全国の雑貨店(WEBに出店している)のタワシの価格を比較できるし、商品番号も特定する事ができる。その上、どの店が一番安いのかも検索できる。
その友人に私はこう応えた。
「それは全くその通り。ITが発達した現代、そのような争いに参戦して勝者になれればその業界で一番になれる。しかし、・・・・。」
その争いで勝者になれるのは一人(一社)である。現実には、価格だけでなく送料、信用その他の条件もあるので一社ではなく数社になると思われるが、どちらにしても参戦した数千社のほとんどは戦線を脱落する事になるだろう。
現在、総体的にはアマゾンが世界を席巻しようとしている。日本では他にも楽天やモノタロウ等有力な業者があり、中国ではアリババが大きなシェアを占めているが、アマゾンは、日に日にシェアを伸ばしている。
アマゾンの2020年の売上は3860億ドル(41兆3000億円)である。そして、前年比37%増である。37%増と言う数字は、まだまだシェアを伸ばす伸びしろがある事を表している。今後まだまだ伸びるだろうし、ほぼ一強と言って良いかもしれない。
価格、品揃え、サービスなど総合的にアマゾンはトップの座を射止めたのだろう。少数の業者による寡占化はこの先もっと先鋭的に進むのかもしれない。
競争に参加した業者の99%が撤退を強いられるとしたら、この先物販、小売りはどのようになって行くのだろうか。そして、呉服業界はどのようになるのだろう。
つづく