全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-53 子供のきもの
着物は日本人が昔から着て来た衣装である。洋服が入ってくる前は、皆着物を着ていた。老若男女を問わず、普段も晴も皆着物を着ていた。もちろん子供も皆着物を着ていた。
私が子供の頃は、もう洋服が普及して着物で学校に通う子供はいなかった。父の子供の頃(昭和初期)の写真を見ると、クラスの集合写真には着物を着ている子供の方が多かった。それでも私が子どもの時の寝巻は着物だった。筒袖の着物を着て親に紐を結んでもらっていた。「パジャマ」と言うハイカラな寝巻を来たのは何時頃からだったろう。小学校の中頃だったかもしれない。それまでは、夏は浴衣の様な寝巻、冬は暖かいネルの寝巻だった。
今「子供のきもの」と言えば、ほとんどが晴れ着である。一昔前までは浴衣の需要もあり、子供用に仕立てる事もあったが、今子供の浴衣と言えば、既製品がほとんどである。その既成浴衣は、浴衣とは思えないようなものも多くなってきている。
昔は疋物の浴衣地があり、子供の浴衣を仕立てる時には要尺だけ切り売りしていたこともあったが、今はそのような反物もなく、一反物さえ子供用は少なくなってしまった。
稀に子供の浴衣を自分で仕立てたいからと反物を求めに来るお客様もいらっしゃるが、その時には、捺染手拭いのロールで仕入れたものを流用している。まともな注染の浴衣地では子供用には高すぎる事もあって、捺染手拭は結構評判が良い。縮小してしまった呉服業界の苦肉の策である。
さて、晴れ着の子供の着物と言えば、まず一つ身がある。子供が生まれて宮参りをする時の着物である。着物と言っても子供に着せる訳ではなく、着物を抱いてその上に掛ける、掛け着物である。更に女児であれば3歳と7歳、男児であれば5歳の時に宮参りをする。いわゆる七五三である。
子供の着物を購入されるお客様は、ほとんどがこの宮参りと七五三の着物である。男児女児共に私の店では対応しているが、これらの子供の着物は仕立てるのも、お客様に理解して頂くのも大変難しい面がある。
難しいと言うのは、第一に子供は同じ歳でも身長の開きが大きい。三歳の子供で1月生まれと10月生まれでは成長に大きな差があり、また数え年、満年齢でも大きな差がある。まして個人差もあり「何歳ですからこの着物です」とは言えないのが子供の着物の難しさである。
更に子供は日に日に成長する。せっかく作った着物を長く着せたいのが親心である。三歳で創った着物を、
「この着物、七歳でも着せられますか?」
と言う要望も当然出て来る。着物は寸法の変更には鷹揚な面があり、工夫すれば対応できるのだが、お客様に理解してもらうのが一苦労である。そんな要望に如何にして応えるのか。この辺の事情を詳しく述べたいと思う。
つづく