全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-53 子供のきもの(その2)
生まれた子供のお宮参りに使うのが一つ身です。一つ身は「掛け着物」とも呼ばれるように、他の着る着物とは少し違った構造になっている。
背中(後ろ身頃)は、一枚の生地で出来ている。大人の着物も子供用の三つ身や四つ身も背中には背縫いがあり、二枚の生地を裁ち合わせてある。これは一つ身の大きな特徴である。
抱いた子供に掛けるので、背中の柄が一番の見せ所である。帯をしないので柄が隠れず、背中には大胆に模様が描いてある。袖口は縫っておらず、開いている。
掛けた着物がずり落ちないように長い付紐が付いている。三つ身や四つ身でも着せ易いように紐を付ける場合があるけれども、一つ身の紐は位置が違う。三つ身や四つ身よりもずっと上に付けてある。そして、紐を縫い付けるところには装飾風の紐飾りを付ける。
着物の身丈は、着る人の身長に合わせて仕立てるものだが、掛け着としての一つ身の場合はそれに限らない。昔は、「手通し」と呼ばれる実際に子供に着せる(包む?)一つ身もあったので、仕立てる事もあったようだが、現在一つ身は殆ど既成である。既製品の身丈は95~100cmに仕立ててある。私が持っている仕立ての本には、一つ身の身丈が80~90cmとあるので、今の既製品は昔よりも長くなっているらしい。
一つ身は宮参りを終えるとお役御免である。昔はそうしたかもしれないが、現在は三歳の宮参りに着る事を勧めている。
一つ身→宮参り、三つ身→三歳、四つ身→七歳、と思ってしまいがちだが、そうとは限らない。先に記したように、一つ身は身丈が90~100cmある。三歳の標準身長は93cm。四歳は100cmである。身揚げを考えても身丈は十分に採れる。
私の店では、宮参りの一つ身を買ったお客様には、女児であれば三歳の七五三での着用を勧めている。子供の身長はバラつきがあるけれども、85cm~90cmであれば身揚げをして丁度である。
身長に合わせて身揚げ肩揚げをする。袖を塞いで丸みを付ける。紐の位置をずらして着用に適した位置に付け替える。以上の様な加工をすれば三歳でも着る事ができる。
三歳用の造り帯もあるけれども、被布を着せれば背中の柄を気にする事もなく派手な袖柄を見せる事ができる。帯は被布の下に隠れるので、浴衣用の三尺帯でも何でもよい。あとは足袋、草履、髪飾り、巾着を用意すればよい。
三歳の子供に着物を着せるのは大変に思えるかもしれない。「じっとしていないので着せられない。」「着てもゴロゴロ転がって着崩れる。」「足袋を嫌がる。」「草履を履いて歩けない。」等等。
私も二人目の孫の宮参りの時、二歳の長女が着物を着てくれるか心配していた。しかし、女の子はやはり女の子である。着物を見せると顔がほころんだ。そして、着せる時には、
「御姫様になるんだよ。」「お嫁さんみたいだね。」と誉めそやすと、すんなりと着物を着てくれた。神社に着き草履を履かせると、まがりなりにも嫌がらずに履いて歩いてくれた。やはり、子供とは言え日本の女性のDNAが宿っていると感じさせられた。
つづく