全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-53 子供のきもの(その6)
3歳用に三つ身の着物を仕立てて、7歳で着るには、揚げを降ろすだけでは足りない。身巾も足りなくなる。どちらにしても仕立替えをしなければならないが、身丈をどうやって確保するのか。
3歳の着物を仕立てる場合、私の店では表地を折り返して仕立てるのを勧めている。表地を折り返し、裁たずに八掛として使うのである。そうすれば、解けば八掛の分だけ表地にする事ができる。四つ身や十三参りの大四つ身にも対応できる。この場合、衿は縦に搔いて使用するので四つ身用の衿にはならないので、余り布を取っておく必要がある。
四つ身に仕立て直す時には、解いて洗い張りをして仕立て直す。身丈を延ばして八掛地は色物の八掛を使う。襟は取って置いた余り布を使って仕立てる。これで三つ身は、完全に四つ身として仕立て直される。
更に、大人になっても仕立て替え出来る方法もある。大人と言っても四つ身柄なので、柄的に30歳40歳まで着られるものではないが、高校生や二十歳前後でも十分に着られる柄もある。
先日、子供が大きくなっても着られるようにして欲しいと言うお客様に注文された三つ身を仕立士と相談しながら仕立てた。
衿は搔かずに折って仕立てる。余り布を残さず折り返して仕立てる。余り布は、ほとんど残さず本裁ちと同じように裁って三つ身を仕立てる。解けば、大人の着物の寸法で仕立てる事ができる。
ただし、この場合、生地を全て使用するので少々重くなってしまうのと、衿を幾重にも畳むので分厚くなってしまう。しかし、ふっくらとした感じが、かえって可愛らしいかもしれない。
必ずしも新しい反物に拘ることはなく、もしも母親が昔着ていた可愛らしい柄の着物があればそれを仕立て替える事もできる。
私の息子が五歳の時、私の祖母が着ていた江戸小紋を仕立て替えて着せた。祖母が仕立てて5~60年も経った着物だったが、既成ではない本当の着物に仕上がった。
子供の既成の着物は、「一度限り」と言う印象が付きまとっているように思う。それは着物を着なくなってしまった現代のなせる業で、着物本来の長く大切に着る、いわば完全循環の着方を失ってしまっている。
私は、「子供に既成の着物を着せるべきではない」などと言う気は全くない。「一度限り」の宮参りであれば、それは妥当と思う。私が言いたいのは、着物本来の着方を理解して頂いたうえで着物を選んでもらいたいのである。
「七五三では既成の三つ身や四つ身を着せるもの。」と思わず考えていただきたい。結果的に既成の着物を着る事になっても、着物本来の良さを知っていただきたい。