全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-56 コロナ一年、アフターコロナは?(その3)
コロナ禍に右往左往している私は、なすすべもなく帳簿を見ていたが、この「なすすべもない」が経費の削減に繋がっていた。
商売を一生懸命にやろうとするとお金が動く。販売促進の為の経費であったり、設備投資であったり、はてまた商店街や問屋さんとの付き合いにも経費が掛かっていた。
しかし、このコロナ禍で毎年恒例の創業売り出しは中止。出張も行かない(行けない)。外での会合はなし。消耗品費や雑費も減る。あらゆる経費が昨年を下回り、自然に経費は減って行った。
ほとんどの経費は売上を増進させるために費やされる。宣伝広告費は販売を促進する費用である。逆に言えば、経費を使わなければ売上は確保できない。売上と経費は相関関係、表裏一体の関係になっている、と思っていた。
しかし、否応なしに売り上げが下がり、経費が減少すると、「果たしてこの経費は本当に必要だったのかな」と思える物が出て来る。「必要経費」の名の基に、今迄は何の疑問もなく費やしてきた経費が、実は「不必要経費」ではなかったかと思える。
また、仕入れを極力抑えて商社への支払いを減らし資金繰りを行った。仕入れをしないので店頭の商品は減って行く。今までは月に一度くらい仕入れの為東京に行っていた。少なくなった商品を補充する為である。
店頭の商品が少なく成れば、消費者の選択肢が限られ購買意欲を落としてしまう。お客様には常に新しい商品を十分に用意しなければならない。そう言うつもりで今迄仕入れを続けてきたが、この度また大きな気づきがあった。
来店するお客様の数は減り売上も下がっている。それでも在庫を売ってある程度売り上げが出来ている。そして、在庫が減れば売り上げが更に減少すると思っていたが、実はそうでもなかった。
売上が少なくなっているので、売上による在庫の減少が少ない事もあるが、それ割り引いても、在庫の減少はそれ程売上に影響しなかった。少しは伝らで仕入れをしていたが、売上に対する額は少なくバランスが採れていない。それでも半年は在庫の減少による売上への影響は感じられなかった。
考えて見れば、私の在庫に対する認識が甘かったのかもしれない。お客様の本当に必要とする商品を考えれば在庫は多過ぎたのかもしれない。在庫の管理についても考えさせられた。
「経費」「在庫」共に気づきがあったが、お客様についても教えられた。
来店するお客様、とりわけ常連のお客様の来店が激減した。それまでは、用はなくても店に立ち寄ってくれるお客様もいたが、コロナ禍でぱったりと止まった。お客様がいらっしゃらなくては売上はできない。このまま売上はゼロに収束するのだろうかと悲観していたが、そうはならなかった。
少ないけれども来店されるお客様がいらした。常連のお客様以外でも電話を頂戴して来店される方もいらした。その結果、売上は減少はしたがゼロになる事なく、最低の売上は保っていた。
つづく