全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-56 コロナ一年、アフターコロナは?(その9)
今コロナ禍に際し、あらゆる産業が停滞している。呉服業界もご多分に漏れず停滞している。結婚式やお茶会など着物を着る機会が無くなり、着物を愛好していた人達も呉服屋に足を運ぶ機会が減ってしまった。
展示会の客数も激減している。それでもまだ展示会は頻繁に行われていると言う。客が少なく採算が採れないだろうと思うのだが、問屋さんの話を聞くと、「展示会をやめてしまうと客が他の展示会に流れてしまうので無理してでも続けている」との事だった。
今時展示会に行って呉服を購入する人がいるのは確かだけれども、その数は確実に少なく、従来の客の多くが着物・呉服屋とは一時的に縁を切った状態になっている。
コロナ禍が終息した後お客様は、また着物や呉服店に戻ってくるだろう。しばらく呉服と離れていて着物が新鮮に感じられるかもしれない。
毎日ラーメンを食べていた人が一年間ラーメンを食べずにいれば、最初に食べるラーメンの味は新鮮に感じられるだろう。そして、その食べたラーメンに色々な気づきがあるはずである。今まで気づかなかった美味しさや欠点など。
着物としばらく離れていた人達が目にする着物はどのように映るのか。展示会で勧められるままに買っていた着物が「本当に自分にとって必要なのか」「価格は適正なのか」「購入した着物や帯の染や織がどのようなものなのか。」等。消費者は冷静な目で着物を見られるのではないだろうか。
商品が消費者の冷静な目に晒された時、長い間ねじ曲がって積まれてきた「レンガ」は一気に崩壊する恐れがある。価格設定や、ありもしない付加価値が消費者に見抜かれた時呉服業界は混乱に陥る。しかし、その混乱は業界を浄化する物と私は信じている。
コロナ過にあって、私の店も影響を受けて売上が激減したが、本当に必要な着物の需要は途絶えなかった。これから呉服業界が末永く続き、日本の伝統文化を後世に伝えるには現在の業界を浄化する必要があり、それがこのコロナ禍がきっかけになるのであれば、コロナ禍によってさんざん打撃を受けた呉服業界にとってせめてもの救いである。
あらゆる産業にとってコロナ禍が、今後どのように影響を及ぼすのかは想像がつかないが、国民・消費者が本当の意味でより良い方向に向かう切っ掛けになれば幸いである。
つづく