全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-57 ゆかた
最近、堅い話ばかりだったので「ゆかた」の話をしよう。
ゆかたは日本の夏の風物詩である。暑い日本の夏の風景には欠かせない。御婦人の涼しげな浴衣姿は暑さを忘れさせてくれる。下駄を履いて、カランコロンと音を発てて歩けば、視覚的のみならず風鈴の音の様に耳をも楽しませてくれる。
さて、その「ゆかた姿」は昨年ほとんど見かけなかった。またコロナの話になるが、昨年はコロナ禍のお陰で夏祭りはほとんど中止。花火大会も中止や桟敷席廃止など、ゆかたを着るシーンが悉く失われてしまった。
私の店でも、昨年のゆかたの売上はゼロに近いと言っても良いくらい減った。着る機会がないのだからしょうがない話なのだが、商売をしている者にとっては「しょうがない」では済まされない。
今年は、と言うと昨年よりは良い。ゆかたを仕立てる人もちらほらお出でになった。昨年よりは良くなったけれども、考えて見ればコロナの感染者数は今年の方が昨年よりも遥かに多い。コロナ禍は、昨年よりも今年の方が深刻なはずだけれども慣れというのだろうか。緊急事態が宣言されても最近は気にせずに出歩く人が多くなったように昨年よりもガードが堅くないようにも思える。
しかし、ゆかたは必ずしも祭りや人混みも中で着るものでもない。家の中でゆかたを家族で楽しんでいただけたらと思う。
さて昨年は、ゆかた姿で街に繰り出す人はほとんどいない何とも寂しい日本の夏だった。しかし、今年はゆかた姿をちらほら見掛けられた。今年も山形の花笠まつりや夏祭りが中止となり、花火大会も桟敷なしの小規模で行われた。
ゆかた姿を見かけるのは私の店の前である。私の店の前と言っても、ゆかたを着た人が私の店に群がっている訳ではない。私の店は「水の町屋 七日町御殿堰」と言う施設にある。「水の町屋 七日町御殿堰」は、四百年前に造られた「御殿堰」と言う水路を修復してその傍らに建てた商業施設で、市民の憩いの場になっている。涼を求めて、また写真撮影の為にゆかたを着て集まって来る。やって来るのは二人か三人組の少人数で、お互いに写真を撮りあっている。主に若い人が中心である。
水の町屋 七日町御殿堰
職業柄、ゆかた姿の人がやってくるとつい見入ってしまうのだが、どうも私の目には、ゆかたらしくない、というよりも涼しさが感じられないゆかた姿が目に付く。なぜだろうか。
一つには、柄が従来のゆかた柄らしくない。涼しげなゆかた柄ではなく、大柄の加工小紋の様な柄が多い。今の若者の好みだろうか。
二つ目は、帯締めや伊達襟をしている人がいる。従来、帯締めや伊達締めはゆかたには用いない。
三つめは、下駄を履いている人が少ない。
つづく