全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-58 七五三
今年も七五三の季節が近づいてきた。
呉服屋の商売は季節とは切り離せない。その季節の着物が店頭に飾られ、呉服屋の店頭が道行く人の目を楽しませた、・・・と言うのは昔の話で、今は呉服屋の店頭に目を向ける人は少なく、関心も薄れてしまったようだ。
それでも呉服屋は季節の商品を入れ替えながら商売をしている。6月になれば次第に夏物を並べるようになる。昔は5月に入れば、ゆかたが売れ始めたが、今は6月も半ばすぎなければ浴衣は動かない。7月にもなれば浴衣が売り場を大きく占め下駄や浴衣の小物も飾られる。8月の盆を過ぎれば浴衣は姿を消し、代わって七五三の着物が店頭に並ぶようになる。
七五三は11月15日である。しかし、今は10月に入れば、土日を中心に神社に参る人達が見受けられる。11月15日に皆が一斉に参られたのでは神社もたまらないだろうけれども、11月15日に集中しないのは他に訳がある。
「おとうさんが休みの採れる日」「祖父や祖母も都合の良い日」また、「神社が空いている日」と言うのもある。家によって事情は異なるが、早い場合は10月初めから神社に詣でる親子の姿が見られるようになる。
そういう訳で8月になると浴衣と入れ替わりに七五三の着物を見にいらっしゃるお客様がちらほら増えて来る。
既成の三つ身や四つ身であれば事は簡単だけれども、小紋を仕立てる場合は仕立てに時間が掛かる。また、仕立てた後に身丈を合わせて身揚げ肩揚げをしなくてはならない。子供は日に日に成長するので、ぎりぎりになってから採寸にいらっしゃる方もいる。
結局、仕立上りを納めるのに一月掛かってしまう。八月から注文を頂いて丁度良いのかもしれない。
最近七五三の着物の注文は昔に比べれば随分と減った。参拝に行かなくなった人もいるかもしれないが、レンタルや写真屋さんで借りる人が多くなっている。
一生にたった一回(着ようと思えばそうではないのだけれども)着る為に着物を新調する事に抵抗を感じている人が多いのかもしれない。一回きりであればレンタルの方が良いと、呉服屋はそっぽを向かれているようだ。
しかし、それでも私の店を訪れて七五三の着物を用意する人はいらっしゃる。「用意する」と言うのは、必ずしも着物を新調するとは限らない意味である。七五三の着物を用意する方法は色々ある。
既成の三つ身や四つ身を身揚げして着る。三つ身のセットを買う。所謂四つ身小紋(女児に似合う小紋)を仕立てる。これらは、「着物の新調」である。
また、母親が着た、姉が着た着物を利用する方もいらっしゃる。身丈を合わせて身揚げ肩揚げをすれば着る事ができる。この場合、刺繍半襟は新調する場合が多い。
手持ちの着物を利用する場合でも、襦袢が古かったり、寸歩が採れない等の理由で襦袢だけ新調する場合もある。思い入れのある着物であれば、是非大切にしてお子様に着せて頂きたいと思うし、ご相談いただければ色々な選択肢をご提案できる。
つづく