全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-58 七五三(その2)
さて、七五三で子供さんに着物を着せる場合、次の様な悩みをお客様から聞かせられる。
「うちの子供は初めて着物を着るのですが、おとなしく着ているでしょうか。」
「子供に着物を着せても嫌がらないでしょうか。」
「草履なんて履いたことがないので靴を履かせた方が良いでしょうか。」
いずれも尤もと言えば尤もな悩みである。大人でも初めて着物を着る人は、動きづらかったり、窮屈だと感じたりする。草履や雪駄も履いたことのない人は、中々指が開かず苦労する人もいる。新しい草履を履いて指が痛く成ったり、皮が剝けたりする人もいる。
私には二人の息子がいる。随分前の話だけれども、長男に着物を着せるのには苦労した。本人の性格が大きいのだけれども、着物を着せようとすると逃げ回る。捕まえて着せても、動いて中々着せられない。着せてしまえば脱ごうとはせずにそれらしく振舞うのだけれども、一度ホテルで着せた時には絨毯の上をゴロゴロと転がり廻ったのには参ってしまった。
子供に着物を着せるのはそんなもの、と思っていたが、今私には二人の孫がいて二人とも女児である。長女を神社に参らせるときに昔の記憶がよみがえり、果たして孫にうまく着せられるのか、おとなしく着てくれるのかと心配だった。
しかし、それはとりこし苦労だった。男児と女児の違いであろう。初めての着物を取り出し、
「〇〇ちゃんの着物だよ。」
と見せると興味を示す。そして着付ける段になって、
「〇〇ちゃんは御姫様になるんだよ。」
そう言うと、おとなしくなって袖に腕を入れてくれる。
身体が小さいので着物の身揚げが大きく、傍目に着難そうに見えるけれども本人は嬉しそうにしている。
「かわいいお姫様だね。」
と言うと笑顔を見せてくれて男児とはまるで違った表情を見せる。
さて、草履を履くのは初めてである。長い距離を歩かせるのはかわいそうと、靴を履かせて車で神社まで行った。車を降りる時に草履に履き替えさせた。果たして、嫌がるのかはてまた途中で泣き出したりしないかと心配だったが、歩いて社務所まで行った。少々歩き難そうだったけれども、それでもニコニコしている。周りの人たちの視線も手伝ったのだろうか、お姫様になったような気分で歩いていた。
着物はやはり女性にとって憧れである。それは日本人のDNAに組み込まれている。そう思った。子供に無理やり着物を着せる必要はない。ただ、子供の頃から日本の着物の目の当たりにし教えれば自然に着物の文化は後世に伝えられる。
お子様が七五三を迎える方に申し上げたい。日本人の子供、特に女児は着物が好きです。無理なく着物を着せてあげてください。