全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-59 アフターコロナ
今の時代、どうしてもコロナの話題になってしまう。
アフターコロナの当社の対応については、心づもりは出来ている事は既に書いた。内的には全て覚悟?が出来ているつもりだけれども、それでもコロナの話題が次々と入って来る。無視すればよいのかもしれないが、そうは行かないような話題が耳に入って来る。
先日、きものの業界紙が送られてきた。季刊の雑誌だけれども、内容は昨年からコロナの話題が頻りである。「今回もまたか」と思ってページを捲ると、産地の現状が数値を伴って書いてあった。大まかな内容は次の通りである。
⒈ 丹後
丹後は縮緬の産地である。縮緬は着物の材料である白生地反物になる。300年前から白生地を織り続け、「丹後縮緬」は白生地の代名詞であった。
最盛期には「ガチャ万」と言われ、織機を一度「ガチャッ」と動かせば一万円稼いだと言う。私も40年前京都にいた当時、研修で丹後を訪れたことがあった。一行は機屋の社長の家に招かれ、その屋敷の広さに驚かされた。一行数十人が入っても十分な程庭は広く、十間以上の縁側があった。
そんな縮緬の産地だけれども、縮緬の生産反数は減り続け、そしてコロナ禍にあって更に打撃を受けている。
その業界紙によれば、令和2年1月~12月の生産数量は、前年(平成31年1月~令和元年12月)対比で39.1%減である。概ね前年の6割に留まっている。
一口に「縮緬」と言っても様々な種類がある。一越縮緬や変わり無地縮緬。また綸子や夏物の絽や紗等。それら伝統的に織られてきた反物の生産の減少が顕著である。一越は54.9%減。変わり無地は45.4%の減である。
一越縮緬は前年が1,267反に対して571反になっている。減少幅に驚かされるが、その量の少なさにも驚かされる。昭和48年には丹後全体で920万反生産されたと言われているが、一昨年は25万3千反、昨年は15万4千反である。
⒉ 京友禅
京都は友禅染の産地である。丹後や長浜で織られた白生地に京都で染を施す。京友禅は日本の女性の憧れでもあった。生産総数では、昨年度275,521反。前年比で26.0%の減である。友禅染の反物は、1971年には1652万反あったと言われているが、それに比べると昨年の生産反数は僅か1.7%である。50年前に比べればほんの僅かな生産もコロナによって大打撃を受けている。
染物には、小紋、染帯、訪問着、振袖、襦袢他様々な種類がある。そして、ここで言う友禅染には、手描き友禅の他、型友禅、ろうけつ、捺染、インクジェット等の染色法がある。
昨年の売上を項目別に見ると、ほとんどが30%以上の減となっているが、何故か振袖だけは7.1%増になっている。そして染色法では、ほとんどが減少している中でインクジェットが4.9%の増になっている。インクジェットと言うのは、パソコンのプリンターと同じ原理で機械で染めて行く染色法である。
このコロナ禍に有って振袖とインクジェットが増えていると言うのは如何にも不自然である。成人式は全国で中止や延期など来年もどうなるか分からない状況である。しかし、これには訳があった。大手の写真館が振袖のレンタル事業に参入したために一度に大量注文を出したと言うのである。その為の特需が実績を上げていると言うのだが、何とも寂しい話である。
いくら大手とは言え、たかが一社の注文で生産数量に数十%の影響を与えてしまうと言うのは、如何に呉服業界が縮小してしまったかと言う証左に思える。
つづく