明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-59 アフターコロナ(その2)

ゆうきくんの言いたい放題

 友禅染は高度の技術を必要とする。生産量の減少は、高度な技術を持った職人の仕事の減少に繋がる。減少で留まれば良いけれども、仕事がなくなり離職する職人も出て来る。

 20年程前、呉服業界が下り坂を降りていた時分、京都では、
「職人が仕事を離れてタクシーの運転手をしている人が沢山います。」
と言う話を聞いたことがある。職人は一度仕事を離れるとなかなか戻れない。私の店の仕立士も、
「一度休むと手があれてしまうから。」
と、長く仕事を離れる事を嫌っている。

 今回の様に、一年足らずの間に3割も4割も仕事が減れば、離職する職人も少なからず出て来る。インクジェットの技術であれば容易に習得できるかもしれないが、長年かかって培ってきた友禅染の技術が失われはしないかと心配である。

⒊西陣織

 呉服を創る職人仕事と言えば、友禅染と並んで帯などの織物がある。とりわけ京都西陣に織屋が集中している。その雑誌にも西陣産地の現状が載っていた。

 西陣では室内装飾用の織物やネクタイ、ショールなども生産されているが、呉服関係と言えば圧倒的に帯が多い。実は西陣ではかつて着尺(着物の生地)も多く生産されていた。紬や御召、ウールは、私が京都にいた当時はかなり生産されていた。「しょうざんウール」は一世を風靡し、御召や紬もかなりのシェアを占めていた。しかし、今日西陣の着尺地はかつて最盛期の数パーセントしか生産されていない。

 さて、その西陣の昨年の生産量も驚くべき数字になっている。帯の合計は、前年比31.5%の減少である。同じ帯の産地として有名な博多では45.5%減、同じく桐生では53.6%の減である。他の二大産地に比べればまだマシなようにも見えるが、15年前(平成17年)に比べると80.2%も減少している。

 また、生産の内訳を見て見ると、我々呉服屋の主力商品である名古屋帯は43.4%減で袋帯は32.8%の減である。その数量を見ると、袋帯162,032本に対して名古屋帯は12,371本である。数量比で名古屋帯は袋帯の1/13の生産本数でしかない。

 私の店で販売する帯は、袋帯に比べて名古屋帯が圧倒的に多い。しかし生産本数はその逆である。名古屋帯1本に対して袋帯が13本売れると言うのは私の店では考えられない。袋帯1本に対して名古屋帯13本と言うところであろうか。

 何故そんなに袋帯の生産数量が多いのか。やはり、振袖の需要だけを狙った店や晴れ着だけを売る店。高額な袋帯を勧める店が多いからと思う。

 普段に着物を着ようとすれば名古屋帯の方が遥かに機会は多い。普段着を着る人、着る機会が減少しているのは確かだが、呉服の販売が晴れ着や高価な商品に特化して売られている様にも思う。

 しかし、それよりも私の店にとっては、名古屋帯がなくなり仕入れできなくなるのを恐れている。

                                      つづく

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