明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-59 アフターコロナ(その4)

ゆうきくんの言いたい放題

 私の手元の「織屋番号一覧」は大分以前のもので2489番までの織屋が記して有る。その時分(昭和60年頃)でも廃業した欠番があり、織屋番号は飛び飛びになって、約700の織屋が登録してある。現在では、老舗と言われる1番から7番までは欠番である。

 一覧の中から、私の店でよく仕入れる織屋を指して、
「〇〇織物はまだ織っていますか。」
問屋さんにそう尋ねると、
「ああ、そこはもう廃業しています。」
他の織屋を聞くと、
「ええ、そこはまだ織っていますが、もう身内だけでやっています。」
「その織屋は、大分前に辞めていますよ。まだ商品は若干出回っていますが。」
そんな返事ばかりである。私の店では余り仕入れないけれども、よく聞く織屋を指すと、
「ああ、そこは元気ですよ。あそこは金がありますから。」
今も続いている織屋は、不動産を持っていたり、他の収入があってやって行けているようだ。中には、
「あそこはもう不動産屋ですね。」
そう言う織屋さんもあった。

 今、新しい「織屋番号一覧」を手に入れたとすると何軒位の織屋が残っているのだろう。300軒程度かもしれない。

 さて、今はコロナ禍の為、急激に呉服の需要が落ちている。他の多くの業種と同じである。この先コロナ禍が治まり社会が元通りに活気づいてきたとするとどうなるのだろう。飲食業界はかなり痛手を受けたとは言えコロナが治まれば再び活気を取り戻すかもしれない。しかし、呉服業界で、染屋や織屋、丹後の機屋を離れた職人が再び職に戻らなければ、例え呉服の需要が戻ったとしてもそれに応えられない。

 前述したように、昨年の西陣帯の生産数量は、袋帯162,032本に対して名古屋帯はたったの12,371本である。袋帯は前年比32.8%減、名古屋帯は43.4%減である。名古屋帯の生産数量は袋帯に比べて遥かに少なく(7.6%)減少幅も大きい。

 普段に着物を着る人、お茶会などで着物を着る人が増えれば、間違いなく名古屋帯の需要は増える。(そうなるかどうかは分からないが。)そうなっても、名古屋帯の供給は難しくなる。

 現に私の店で良く仕入れていた価格も安く織の良い名古屋帯を織っていた織屋は廃業していた。他の織屋の帯を探そうと思っても結構難しい。問屋さんの話では、名古屋帯を織っている織屋は西陣で数件だと言う。博多でも九寸名古屋帯は織られているけれども、それはそれで西陣とは雰囲気が違う。

 数年前から問屋さんに行っても、名古屋帯は少なくなっていた。名古屋帯を織る織屋が廃業すれば、今後増える事は見込めそうもない。

 更に問題は、量的な回復ではなく質的に需要に応えられなくなることである。

                                     つづく

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