明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-59 アフターコロナ(その6)

ゆうきくんの言いたい放題

 伝統技術において、一度失った技術は戻ってこない。精巧な手織りの技術を伝える職人も少なくなっているだろう。成長する伝統産業や成長はしないまでも安定している伝統産業では後に続く職人も期待できるが、呉服の場合は減少が続き後に続く職人は期待できない。

 「爪掻きつづれ」と言う技も大変な忍耐と技術によって支えられてきた。今「爪掻きつづれ」を伝承する職人が何人いるのかは知らない。しかし、少なくても減少、またはいなくなったかもしれない。

 帯を織るにも様々な技術があり、その一つ一つが専門の職人によって受け継がれている。呉服の需要が減少する中で、それにリンクするように職人が減少してきた。それが、コロナ禍と言う百年に一度といわれる災禍によって一気に失われている。量的な確保はできるかもしれないが、高度な技術を要する織物は「絶滅危惧種」となってしまったのだろうか。

 織物に限らず友禅や白生地の織物産地も同じである。

 友禅染は完成までに多くの工程を要する。その工程は担当している一人一人の職人の技術によって支えられている。制作に関わっている職人の一人でもいなければ友禅染は完成しない。

 友禅に限らず、染物の一工程を担当する職人は、家内工業や零細企業も少なくない。私が京都で悉皆に周っていた時、湯のしや直し、紋入れ、欠け剥ぎ、紋紙の製作など、「ここは普通の町屋?」と思われる作業場だった。

 いくら零細であれ家内企業であれ、そこで行われている技は友禅染には不可欠なものである。一つの工程でも無くなれば友禅染はできない。

 只でさえも後継者のいない職種である。コロナ禍が、それらの職人を直撃して、彼らが職を離れる事を心配している。

 白生地も同じである。白生地は機械で織られ、一見スイッチを入れれば自動的に製品が織り上がるようにも見えるが、その品質管理はかなり緻密に行われている。

 以前、丹後に白生地製織の研修で訪れた時、沢山の織機が音を立てて動いている。自動的に白生地を織る織機の間を職人が目を見張って周っている。白生地は約12mの織物。一カ所でも織傷、織難があると、B反と言われて価値が落ちてしまう。真っ白な生地故に織傷や織難は目立ってしまう。

 織機の間を周っていた職人が立ち止まり、傍らの織機を止める。生地難を見つけたのである。止めた織機に掛けてある生地の横糸を解いて、難のある場所まで戻す。そして、難を取り払って再び織機を動かしていた。

 彼らの品質管理はもっと深い物だろう。織機に糸を掛ける前に難が出るような糸を撥ねるだろうし、機械の管理もしなければならない。

 こうして職人により日本の白生地の品質が保たれてきたけれども、この先どうなるのだろう。

 コロナ禍が一刻も早く終息し、技術を持った職人たちを何とか繋ぎ止められれば良いと思うばかりである。

着物のことならなんでもお問い合わせください。

line

TEL.023-623-0466

営業時間/10:00~19:00 定休日/第2、第4木曜日

メールでのお問い合わせはこちら