明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-60 結婚式・・・黒留袖(その2)

ゆうきくんの言いたい放題

 男性は黒のスーツが多い。若い女性はドレス姿が多く振袖や着物姿はまばらである。

 私は通りの向こうから結婚式参加者の衣装を観察している。しかし、時々結婚式に先だって新郎新婦が通りを渡って私共の御殿堰で前撮りをする人達がいる。

 御殿堰は事前の前撮りに良く利用される。しかし普通、新郎は紋付袴、新婦は打掛を着てカメラマンと美容部員がやって来る。そして、カメラを持った親族も付き添ってくることはあるが、その時の親族は普段着の洋服である。

 結婚式当日の前撮りでは、ご両親が伴ってやって来るが、両家の母親は留袖を着ている。通りの向こうから見るのとは違って、目の前を歩いて行く留袖姿は実に臨場感がある。

 中には、「明らかに貸衣装?」と思える留袖もあるが、皆さんよくも黒留袖を着てくださっている。先に、「黒留袖が動かない。」「黒留袖の生産数量が極端に少なくなっている。」「黒留袖を着る機会が無くなっている。」と書いたけれども、まだまだ黒留袖を着ようとする人達が多い事に気づかされる。

 前述したように、向かいの結婚式場は、シビルウェディング用に建てられ、「少人数で」「形式には拘らずに楽しい結婚式を」と言う今時の若者のブライダル需要に応えようとしている。

 そんな中で「息子、娘の結婚式には黒留袖で・・・、と言う気持ちは、まだ日本人の心に十分に宿っている。」そう感じた。

 そう言えば、御殿堰で前撮りをする人達は、全員が紋付、打掛姿である。くどいようだが、「全員が」である。今まで御殿堰(店の前)で前撮りをするカップルが洋装だったのを見たことがない。

 簡単なレストランや居酒屋で結婚祝いをするのとは違い、シビルウェディングと言っても正式な改まった結婚式である。そんな結婚式自体が減っているかもしれないが、確実に黒留袖は必要とされている。

「留袖が売れない」「留袖を染める染屋が無くなっている」のが現実だが、必要とされている留袖を如何に残すか。呉服業界に与えられた社会的な使命であり、振袖や訪問着などにも通じる課題である。

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