明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-61 手拭

ゆうきくんの言いたい放題

 私の店では手拭いが良く売れる。手拭は日本の伝統的な日用品とも言える。

 手拭は、よくハンカチと比べられる。外国人に手拭を説明するのに「ジャパニーズ ハンカチーフ」と説明する事もある。大抵の外国人は、それで納得するのだけれども、中には「これは日本のネッカチーフか?」と聞いてくる外国人もいる。

 手拭は、「ジャパニーズ ハンカチーフ」と言っても差し支えないが、ハンカチよりももっと有用である。頭に被って日除けにする。捩じって鉢巻きにする。また昔は応急時に割いて包帯代わりに使ったり、下駄の鼻緒が切れれば手拭を割いて修理した、と言う話もある。下駄は、鼻緒が切れれば全く履物の役に立たない。昔は、手拭で救われた人も多かっただろう。

 手拭は古来日本人にとって必需品だったのである。

 さて、手拭にも種類がある。手拭い等皆同じだろうと思っている人もいるが、実はピンキリである。

 私の店で扱っている手拭は大きく二種類ある。価格は300円から2200円(いずれも税抜)である。何故そんなに価格が違うのかと言えば、生地や染め方が違う。

 300円の手拭は、染は捺染である。捺染と言うのは、簡単に言えばプリント、印刷である。綿の白生地を機会に掛けて染めて行く。速く大量に染める事ができる。生産コストは安く仕上がる。

 一方、注染と呼ばれる染色法で染められた手拭は、1500円から2200円である。捺染の手拭とはずいぶん違う。この注染の手拭は、職人の手技で染められる。

 注染は型染である。まず手拭いの柄の型を彫る。柄はそれ程細かくは無いが江戸小紋と同じように型を彫って作る。型は江戸小紋とは違って、染めようとする手拭の長さがある。江戸小紋の場合は、一反(約13m)を染めるのに、小さな型を何十回も継いで染めて行く。しかし、注染では型を継いで染める事はなく、手拭と同じ長さの型で染められる。

 注染の詳しい染め方は割愛するが、白地(地が白く柄が染まっている手拭)、地染まり(地が染まっていて柄が白抜きになっている手拭)、多色などによって染め方が複雑になり、その手間によって価格も違って来る。

 300円の捺染手拭と2200円の注染手拭の価格の違いに「何故こんなに価格が違うのですか。」と良く質問を受けるが、それは染の手間の違いである。そしてその染の手間の違いは、その出来に大きく影響してくる。

 捺染は機械で染めるので「きれい」に染まる。ただし、この「きれい」の意味は「上質」を意味するものではない。下の写真は、注染の豆絞り(左)と捺染の豆絞り(右)である。どちらが「きれい」だろうか。どちらが「美しい」だろうか。はてまたどちらが「温かみ」があるだろうか。

左 注染の豆絞り   右 捺染の豆絞り

 見てお分かりの通り、捺染の豆絞りは粒が揃い、全く同じ「きれい」な●が並んでいる。一方注染の豆絞りは、粒が揃わない。●の形が全部違っている。どちらかをくれるといったらどちらを選ぶだろうか。

                                           つづく

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