明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-61 手拭(その3)

ゆうきくんの言いたい放題

 一概に「手拭い」と言っても、捺染もあれば注染もある。またもっと安い手拭いもある。もともとは型染や注染で染められた手拭は、技術革新で安価な染色法で染められ手ごろな価格で入手できるようになった。

 これは、着物も同じで、手描きの友禅から型染め、型糸目、捺染そしてインクジェットによる染色、と安価に染める手立てが開発されてきた。帯も同じである。職人の手業による手織りの帯から機械織、さらにコンピューターを駆使した織物へと時代は変わってきている。

 しかし、それぞれの方法にはそれぞれの良し悪しがある。大きく分ければ品質とコスト。その違いは歴然としてある。同じ手拭、同じ訪問着、同じ袋帯と言っても一様に比べる事は出来ない。

 私の店の店頭にある330円の捺染手拭と店内の1650円の手拭を見比べて、
「何故こんなに値段が違うのですか。」
と聞いてくるお客様もいらっしゃる。その時は、捺染と注染の違いを説明して納得してもらっている。しかし、一般に「手拭」と言えば皆同じ物と思っている人もいて、価格の違いに戸惑うようだ。

 私の店の330円の手拭と同じ物が、インターネットで800円で売られているのを見たことがある。880円と言わずに550円くらいで売られている物もあった。

 330円と1650円では、価格の余りの違いに驚き、疑いを持つのかもしれないが、880円と1650円では、
「同じ手拭が良心的に安く売られている。」
と感じるのだろうか。必ずしも業者が消費者を騙そうとしているのではないだろうけれども、消費者は誤解しやすい。

 熟練職人の数が減り、人件費も高騰している。昔からの手造り品は、染織品でなくても高価になっている。一方技術革新、最近ではIT技術の発達によって次から次へと安価な大量生産の手法が編み出されている。

 製品が安く消費者の手に届くことは良い事であるが、手作り品と大量生産品との垣根は何時まで経っても厳然と存在している。

 330円の捺染手拭いを買いに来たお客さんが、店内の1650円の注染手拭を見て、こちらの手拭は何なのかと聞いてくる。捺染と注染の違いを説明し、それぞれで染められた豆絞り手拭を比べてもらうと、手作りの良さを納得して1650円の手拭を買って行かれるお客様も多い。

 傍目には同じように見える物でも、良く見て頂ければ手作りの良さは誰にでも感じて頂ける。

                                           つづく

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