全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-68 呉服業界も値上げの嵐(その3)
私の店で扱う商品は、大きく分けて二通りある。
一つは、主に小物類。これらは上代価格(小売値段)が決まっている。時には製品に価格が印刷している場合もある。上代価格は決まっていて、下代価格(仕入れ値)は、上代価格の〇割と決められて問屋から卸される。
もう一つは、呉服類等。上代価格は決められていない。呉服店が上代(売値)を決定する。この場合、上代価格を左右するのは、仕入れ値と掛け率である。仕入れ値が高ければ売値は高くなり、掛け率が低ければ売値は安くなるはずである。
さて小物類に関しては、メーカーあるいは問屋の提示する上代価格に従う他あるまい。それに逆らって価格を据え置きしようとすれば利益率は急減する。10%利益率が下がれば、小売屋にとっては死活問題である。
問屋の売り出しで仕入れ値を安く提供する場合があるが、そう言った時に仕入れた商品を消費者に安く提供するしかない。巷で食糧油や小麦粉、小麦粉製品の値上げが毎日のように取りざたされている。かかる商品については、流通の最終段階である小売段階では対処のしようがないのが現実である。
呉服類については業界で考えるべきことが多々ある。呉服の流通については、既に何度も述べてきたとおりであるが、小物や食糧油、小麦商品とはおよそ違った流通体系である。
小物や食糧油、小麦商品は生産者やメーカーの出し値(卸値)が上代価格に直接に跳ね返る。しかし、呉服業界の一部では、生産者の価格は上代価格に全く反映されないのでは、とも思える。
問屋の卸値は小売屋の販売形態に大きく左右される。信用ある小売店が買取り仕入れの場合と展示会に貸し出す場合の卸値は大きく違う。小売価格は、買い取って仕入れた商品を店頭で販売する場合と多大な経費を掛けた展示会とでは5倍から10倍も違う。いずれも生産者の出し値は同じはずなのだが。
呉服業界でもあらゆる原価が値上がりしている。絹や綿等原材料の高騰や人件費、特に中国の手を要する物は鰻登りに上がっているらしい。私が問屋に行って算盤を弾かせれば確実に原価が上がっているのが感じられる。ぎりぎりの線で仕入れ価格を交渉する身にとっては厳しい物がある。買取り仕入れをして店頭で販売する価格は製造原価、仕入原価に左右される。
しかし、展示会販売では原価は大した意味を持たなくなっている。製造原価が高騰しても上代価格は据え置くことはできるだろう。製造原価は上代価格に比べほんのわずかにしかならないのだから。
どんな製品にしろ、急激な価格の上昇は消費者の生活に大きな影響がある。価格が落ち着いてくれればよいと小売業者の立場としても消費者の立場としてもそう思う。しかし、製造原価が高騰しても上代価格には余り跳ね返らない呉服の上代設定には疑問を感じる。