明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-76 成人式・・帯が可哀そう

ゆうきくんの言いたい放題

 今年も成人式がやって来た。コロナのお陰でここ1~2年は成人式が無くなったり、分散開催されたり、時期がずらされたりしたが、今年は徐々に戻ってきたようである。

 この時期になると職業柄、成人式の振袖姿に目をやってしまう。多くの成人女性は振袖を着ているが、相変わらず振袖とは思えない様な「成人式着物」も見かける。男性は、色とりどりの紋付や仮装行列と見間違える様な出立の成人もいる。

 毎年毎年成人式で色々な事を考えさせられるのだが、今年は振袖の帯に目が留まった。振袖の帯は留袖や訪問着に締める太鼓結びではなく、もっと華やかに結ばれる。伝統的なものは「ふくらすずめ」である。

 しかし、最近の成人式で目にする振袖帯の結び方は、もっと複雑で華やか?な物が多い。そして、その結び方は良く見れば一人一人違う・・・と思わされる。背中に花を背負ったような帯が多いが、その花が一人一人違う。つまり決まった結び方ではなく一人一人違った結び方がされている。

 YouTubeで検索してみた。「振袖・帯結び」と。すると出て来る、出て来る。振袖の帯の結び方を解説付きで見る事ができる。結ばれている帯を見ると、いったいどうして結ぶのだろうと思う複雑な結び方が丁寧に解説されている。

 興味本位に動画で帯の締め方を見ていると、そのうちにどうも気分が悪くなってきてしまった。何故かと言うと、「帯が可哀そう」なのである。

 帯で花を創る為に、幾重にも襞を採り、紐やゴム紐で帯を固く縛り、それを広げて行く。あたかも複雑な折り紙をするように。
「帯を解いた時、帯はどうなっているのだろう。」
そう思わずにはいられなかった。

 西陣で職人が帯を織る姿を見、帯を大切に扱って商いをしてきた私の目には、大切に育てて来た花を何のためらいもなく花びらを散らしてしまうように思える。

「帯は大切に扱うように。」
京都にいた時分、さんざん聞かされた言葉である。織物の帯は擦れに弱い。畳んでいる袋帯は、折の部分は擦れやすい。また唐織の様な浮糸は、引っかけて糸を浮かせてしまう恐れがある。

 当時、某小売屋さんの売り出し手伝いに行った時の事である。振袖のお客様に丸帯を勧めていた。丸帯は半分に折って仕立てる為、通常の帯巾(八寸)の倍以上の幅で織られている。実際に着る場合は、胴の部分は半分に折って着付けるので、仕立て前の丸帯の四分の一の巾(四寸)になる。

 そこで、その小売屋さんは丸帯を四つ折りにして「パンパン」と手でたたいてお客様の胴に巻いていた。しかし、結局そのお客様の好みには合わずに買っては頂けなかった。

 さて、折りたたんだ丸帯を元に戻したけれども、帯には折痕が付いていた。その丸帯を持ち込んだ問屋さん(展示会には複数の問屋が商品を持ち込んで並べている)は、
「この丸帯、もう売り物にはなりませんよ。」
と小売屋の奥さんに言っていた。

 確かに、その小売屋さんの丸帯に対する配慮は足りなかった。見ていてそう思ったが、その場で私がお客様の間に入る訳にもいかなかった。黙って見ていたが、その後どうなったのかは知らないが、当時の問屋さんの帯に対する認識は確かだった。

                                           つづく

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