明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-78 呉服屋の居場所(その4)

ゆうきくんの言いたい放題

 結論から言えば、呉服屋が自らを幕の外にしてしまったのではないだろうか。そして、その背景には、着物を着る事が無くなり、庶民から着物が遠ざかってしまった事情もある。

 かつて私が子供の頃、私の祖父や祖母は、今の呉服屋とは違ってもっと自信を持って商売をしていたように見えた。

 お客様が店にいらっしゃるとお茶を飲みながら長々と話しをしていた。子供の私は、お客様が店にいらっしゃると、店にはいられないので奥に引っ込んでいる。退屈なので
「早くお客さん帰らないかな」
と思ったりしたけれども、お客様は長い時間店にいる事が多かった。そして着物の話になると、祖父や祖母はお客様にははっきりと物を言っていた。お客様の言葉に迎合する事もなく、遠慮がちではあるが、「着物とはこう云う物」と伝えていたように思う。

 お客様は祖父や祖母の言う事に納得して着物の柄や寸法を決めていた。奥の部屋から見ている子供の私にもそう感じられた。

 当時、呉服屋には居場所があり、お客様はそれを認めていた。それは決して呉服屋がお客様に商品や好みを強制するものではなく、着物の真実をお客様に伝え、その上でお客様の選択を待つ、と言った本来の商売人としての立場であった。

 現代は着物の需要がなく、着物が売れない。それでも呉服屋は着物を売らなければならず、お客様の声に迎合しながら商売をしなければならなくなっている。そして、そのお客様の中には着物の事は知らない人もいる。

 先に書いた、「紬の節」については、問屋で聞いた話だった。お客様から紬の節が難だというクレームを受けたという。
「その節は、そんなに大きな節だったのですか。」
と聞くと、
「いいえ、普通の紬にあるような節ですが、少し大きかったかな。」
「それでどうしたのですか。」
「ええ、小売屋さんから、お客様の所に行って誤ってくれ、とので織屋の人間を連れて謝りに行って来たんです。」
結局その紬が難物であることを認めて謝罪してきたという。
「それでは市中にある紬のほとんどは難物、と言う事になるのではないですか。」
そう聞くと、
「ええ、そうなるかもしれません。」
これは大変な事である。もしもそうなれば、呉服屋はいつ何時クレームを受けるか分からない。

 一方これとは真逆の話を聞いたことがある。

 ある小売屋さんが、お客様に売った本塩沢の着物が水で縮んだというクレームを受けた。その小売屋さんは、問屋を通して織屋に問い合わせた。すると塩沢の織屋からの回答は、
「塩沢は縮みますよ。水なんかに付けたら間違いなく縮みます。」
織屋さんは、本塩沢の性質を正確に伝えている。

つづく

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