全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-79 きものの価値・物の価値(その15)
「きものの価値・物の価値」と言う表題で染物について論じて来た。染物についてはまだまだ書きたい事、あるいは私の知らない価値基準など描ききれないのでこの辺で織物の価値について論じる。
「染物」「織物」については、「きもの講座4.織と染について」で詳しく論じているが、ここで簡単におさらいをする。呉服業界で使う「染物」「織物」の定義である。
「染物」とは、先に生地を織って後から染色(色・柄を付ける)したものを言う。縮緬の白生地に友禅染を施したものはその典型である。
「織物」とは、糸の段階で染色し、染織された糸をもって織った物を言う。紬は先に糸に色を染める。西陣で織られる帯は多くの色糸を用意してそれらを巧みに織って柄を出す「織物」である。
さて、織物の場合、どのような織物が良い織物なのだろうか。まず紬について考えて見よう。
紬には様々な種類がある。そして、価格も様々である。どのくらい様々なのかと言えば、3~4万円程度のものから数百万円の物まである。呉服の場合の尺度は価格万能ではないので、市中で売られている紬は、価格を決定する基準が店によって違うので、
「あちらの店よりも、こちらの店の紬の方が高いから良い品である。」
とはならないのだけれども、同じ基準で付けた価格であれば目安となる。
結城紬を例に採ると、同じ「結城紬」のラベルの貼った商品でも10万円以下の物から100万円の物まである。何が違うのだろうか。
それらの違いは、まず糸にある。安い結城紬と高い結城紬では使用する糸が違う。元々結城紬は茨城県結城地方で織られたもので、経糸緯糸全て手で紡いだ糸を使用している。おばあちゃんが繭から糸を引き出しながら指先に唾液を付けて糸を紡ぐ様は結城紬の紹介ではよく見られる。一反分全ての糸は機械を使わずに手で紡がれる。
一方安い結城紬は経糸に生糸を使ったり、機械で紡いだ糸を使用する。人件費の違いが価格に反映される。
結城紬では、品質を保持する為に厳格な検査を行い、証紙を発行している。検査の中には、使用されている糸が全て手で紡がれているという条件もある。「本場結城紬」と言う証紙によって品質は直ぐに分かる。
糸の違いは、湯通しをして仕立て、長い間着る事によってはっきりとわかって来る。丈夫で着る程に柔らかく着易くなるのである。
同じ事は麻の着物でも言える。
麻の着物と言えば、小千谷縮がある。小千谷縮は新潟県小千谷で織られる麻織物である。浴衣の生地として売られるが、着てとても涼しく夏には持って来いの着物である。
小千谷縮は一反5~6万円。手頃な夏の着物である。他に麻の着物と言えば、同じ新潟の越後上布。他に石川県の能登上布。沖縄県の宮古上布がある。しかし、これらの上布と称する麻織物は、100万円あるいはそれ以上、物によっては300万円の値段が付いている物もある。同じ麻織物で、何故そんなに値段が違うのだろうか。
つづく