明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-79 きものの価値・物の価値(その3)

ゆうきくんの言いたい放題

「目利き」と言う言葉がある。「良い物」と「そうでない物」の違いを即座に見分けられる能力の事である。長年魚屋をしている人は、一目でその魚が新鮮なのかどうかが分かる。同じ魚でもどれが脂がのって美味しいかもすぐわかる。私は行き付けの(向かいの)魚屋に行って魚を選ぶ時に、なじみの店員さんに、「どれが一番美味しい?」と聞くと、即座に、「一番右のやつですよ。」と即座に返って来る。それ程吟味するわけでもないのに、遠目でもすぐに判断できるらしい。

 八百屋でも同じだろう。新鮮なのか、熟れ頃の果物なのか、見る人が見れば分かるのだろう。

「目利き」と言えば何と言っても骨董屋だろう。数ある中から真に値打ちのある物を探し出す。その力がなければ骨董屋は務まらないだろう。

 書画や陶器など、名品と呼ばれる高価な物から汎用品として用いられる廉価な物まである。そしてそれらは何処に行ってもその価値が認められる。ある所で廉価に流通している皿が、他の地では非常に高価で売られていると言う事はない。その反対も同じである。

 従って、良い物は良い理由がある。それを見分けられるのが「目利き」である。着物にも良い物は良い理由があり、それを見極めなければならない。

 以前、テレビで金魚の産地の事が放映されていた。観賞用金魚を育て出荷するのでの話である。生まれたばかりの大量の金魚を見て、一匹一匹より分けていく。数が多いだけに、一匹を見分ける時間はほんの数秒(一秒くらいだったかもしれない)だった。観賞魚として生育する金魚とそうでない金魚を選んでいる。

 観賞魚として育てられる金魚は大切に育てられ、他は祭りで安価に売られるらしい。観賞魚は成長すれば一匹数万円、数十万円で取引される。そのように将来育つのかどうかを即座に判断してより分けていた。

 さて、どのような金魚が観賞用に選別されているのか。それを見ていると、友禅染と全く同じだと思った。高値で取引される育った観賞魚を見ると、正に友禅染の良さと同じだった。良い友禅染の良さは良い観賞魚の良さと同じだった。

 私は問屋で仕入れをする時に次のような経験を良くする。

 問屋の展示会では商品が山積みしてある。(最近は商品が少なくなり「山積み」と言う言葉は当たらなくなったかもしれない)訪問着は10枚位重ねられた山が10も20もある。私が「訪問着を見たい」と言うと、問屋の若い人がその訪問着を一枚一枚送って見せてくれる。目に付いたのがあれば、「ちょっとそれ」と言って外してもらう。全て見終わって、はずした訪問着の中から算盤を弾いて仕入れる訪問着を決める。

訪問着の山は価格毎に分けられていることが多い。予め、
「この山の訪問着はだいたいいくら?」
と聞くと、
「ここからここまでは〇〇円位です。そしてここからは少し高くなって〇△円です。端の二つは特選ですのでそれ以上です。」
と聞かされて品定めが始まる。

 訪問着を送る問屋の若い人は、「これはどうですか。」「これ、良いでしょう。」と声を掛けて来る。私はそう言う声には耳を貸さずにひたすら着物の柄を見ている。気に入らない染屋の訪問着が続くと、「その山はもういいよ。」と言ってその山を飛ばすこともある。

つづく

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