明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-79 きものの価値・物の価値(その4)

ゆうきくんの言いたい放題

 目に付いた訪問着があれば、「あっ、それっ。」と言って山から外してもらう。そうやって取り合えず目に付いた訪問着を選んで行く。

 全ての山を見終えると、選び出した10枚位の訪問着が広げられている。その中から価格を考慮しながら仕入れる訪問着を決める。いくら気に入った良い訪問着であっても、売れそうもない価格であれば仕入れはしない。逆に言えば、価格が高ければ良い訪問着など沢山ある。しかし、呉服屋で仕入れる訪問着は売れなければならない。良い訪問着を売れる価格で安く買うのが仕入れの仕事である。

 選び出した訪問着を一枚一枚もう一度見た上で、気に入った訪問着の価格を問屋に尋ねる。問屋は算盤を弾いて価格を提示する。

 ある時、一枚の訪問着の価格を尋ねると、問屋の若い衆は算盤を弾いて「×△円」と算盤を答えた。その訪問着は「この山は〇〇円位です。」と言った一番安い山から抜いた訪問着だったが、提示された価格は、〇〇円の二倍程度だった。
「〇〇円じゃないのか。二倍もするじゃないか。〇〇円の山から抜いたんだぞ。」
そう言うと若い衆はもう一度札を見て、
「ええ、これは違うんです。これは高いんです。」
「なんだ、人が気に入ったというと高くするのか。おかしいじゃないか。」
若い衆は困った顔をして上司を呼んだ。事情を聞いてその上司が言った。
「結城屋さん、これは間違って安い山に入っていました。この訪問着は〇〇百貨店が特注で染めさせた物の一枚なんです。」

 その訪問着は〇〇円程度ではない事は一目でわかっていた。誤って安い山に入っていたことも想像できた。しかし、駆け引きの為に食い下がった。
「〇〇円と言ったんだからそうしてよ。」
しかし、問屋としてそれ程値引きできるわけがない。
「分かりました。そうしたら×〇円までしましょう。」
そう言って値引きさせる事ができた。その商品からすれば非常に安い値段だった。

 呉服屋が仕入れをする時には良い商品を見る目が必要である。訪問着・染物を選ぶ場合、着眼するのは、柄と染の質である。いくら柄が良くても染が悪ければ良い商品とは言えない。また、いくら染が良くても柄が良くなければ仕入れをする気にはなれない。

 柄は主観が伴う事で、呉服屋によって好みは違って来る。絶対的な基準はないかもしれない。しかし、染の質は厳然たるものがあり、目利きの根幹である。

 さて、良い染物とはどんなものか。一口では中々言い表せないが、「手作りの味」と言うのが一つのキーワードになりそうである。では「手作りの味」とはどのようなものか。

 染物で手作りと言えば、友禅染が代表的である。染物には友禅染の他にもいろいろとあるが取り合えず友禅染を例に話そう。

つづく

着物のことならなんでもお問い合わせください。

line

TEL.023-623-0466

営業時間/10:00~19:00 定休日/第2、第4木曜日

メールでのお問い合わせはこちら