全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-80 呉服業界まだまだ、私も井の中の蛙
呉服業界が低迷している。「低迷している」と書くと、いつか復活するのではないかと期待を持たせてしまうが、正直な処昔の様な業界に戻ることはできないと思っている。しかし、もっと健全な形で業界が末永く続く事を願っている。
私の店も呉服の売上は昔に比べれば激減している。それでも工夫に工夫を重ねながら今日まで続けている。
ビジネスは昔に固執してしまっては発展がない。発展がないばかりか足元をすくわれる事にもなる。展示会の客が減っているからと言って、あの手この手で集客するのは時代逆行で、限界点に達すればたちまち行き詰ってしまうように思える。
さて私の店の場合、店頭の活性化を図り、呉服以外(と言っても呉服に関連する)商品を扱っている。呉服店の中には、毛皮や宝石、はてまた健康機器などを売る店もあるけれども、専門知識が伴わない商品は売らない事にしている。
宝石や毛皮を売るには相当の専門知識を要する。問屋が持ってきた商品を並べて売るだけでは消費者への責任が果たせない。例えば同じルビーでもどんなルビーが高いのか、あるいは安いのかは分からない。またその相場も分からずに消費者に売る訳には行かないからである。
私の店で扱うのは、呉服の流通線上にある商品や素材を共にする者など、私の知識の射程距離内の商品である。和の商品は結構関心が高く、通りすがりのお客様も多く買って行かれる。
私の店は山形市の中心部で、私が経営する別会社、七日町御殿堰開発(株)が運営する「水の町屋七日町御殿堰」にある。開業13年を迎え、全国的に認知され県外や海外のお客様も多く訪れるようになった。
それらのお客様が来店され小物を買って行かれるようになった。彼らは、土産物にと小物を買って行かれるが、中には「山形の物」と商品を探す方もいらっしゃる。
店には米沢で染めた紅花のハンカチも置いているが、多くは京都等で作られた和の小物が中心である。お客様が商品を手に取り、
「これは山形のものですか?」
と聞かれるが、
「いいえ、これは京都です。」
と答えると、商品を置いてしまうお客様も多い。
山形の産品と言っても、お土産屋さんで売っているようなものでは店には合わない。呉服や和のテイストに合う小物を探していた。
先頃、郊外に物産館ができたので女房と見に行った。広い駐車場があり驚くほど豊富に山形の物産を集めていた。酒処山形の酒は殆どの銘柄、名のある日本酒が並んでいた。その他、菓子や漬物、食品をはじめ鋳物工芸品など。
そんな中に小さなコーナーだったが、山形の和の小物が並んでいた。紅花や榀布、苧麻を材料とした財布や眼鏡ケースなどが目に留まった。
紅花染や米織を材料とした小物は見かけるが、土産物の域を出ない物が多い。土産物の域と言うのは、造りがどうしても安っぽくなる。京都西陣の生地を使った小物は口金もしっかりとしているが、いわゆる土産物は口金も華奢だったりする。
しかし、それらの小物は違っていた。山形の小物に出会う度に見ていたが、今迄見たことがなかった。
すぐさまメーカーの名前と住所を確認した。出店しているのは二店だった。
つづく