明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-81 コロナの功罪(呉服業界)その3

ゆうきくんの言いたい放題

 とりあえずコロナが去って、「さあこれから・・・」と言う雰囲気ではあるが、業界に残した爪痕は大きい。

 コロナ禍で小売屋(呉服屋)が店を閉めたと言う話は聞かない。
「これからお客様が戻ってくれば何とか・・・。」
と思っている小売屋が多いのではないだろうか。かく言う私もその一人である。

 しかし、業界の川上はもっと深刻なように見える。

 呉服業界は、ここ数十年衰退の一途を辿ってきた。メーカーから小売屋まで、つまり川上から川下までその影響を被り、次第に体力が衰えていた。その中で小売屋や問屋もある程度淘汰された。そして企業努力を重ねて生き残って来た。

 小売屋や問屋の企業努力とは、呉服以外の商品を扱って売上維持に努力した店もあった。宝石、毛皮からはじまり健康器具など、顧客に販売できるものを販売していった。店の規模を縮小して生き残りを図る店もあった。

 それらは、それぞれの小売屋や問屋が外に対して生き残りの術を求めた結果であった。しかし、それらの努力とは別に業界として決して行ってはならない(と私は思う)方法でも生き残りを図っていた。

 それは、企業の衰退を業界の川上に対してシワ寄せしてきたことである。

 業界の商慣行は昔と比べて大きく変っている。昔は商品の取引において、メーカー→問屋→小売屋という流れが整然とそれぞれの役割を担いながら機能していた。

 メーカーは良い商品(売れる商品)を創る事。問屋はより良い流通を図る為にメーカーと小売店を繋いでいた。小売店は消費者の好みを察知して、より売れる(消費者の欲する)商品を問屋に求めていた。

 結果的に消費者の好みは小売屋から問屋を介してメーカーに伝わり、切磋琢磨しながらメーカーから小売屋まで良い意味での善循環が為されてきた。

 しかし、業界が下り坂を転がり始めると、不都合は川上にしわ寄せするようになった。

 小売屋は在庫負担を減らすために商品を買い取らなくなり、商品を借りて(いわゆる浮き貸し)商売をするようになった。展示会などはその最たるもので、広く問屋から商品を借りて行う商売である。

「浮き貸し」が小売店の財務を改善するのは間違いないが、弊害がそれ以上に起きて来る。

問屋は商品の回転が悪くなるために利益率を上げなければならない。その為に呉服の価格が上がる。小売店は何が売れるかを見極める事がないために消費者の好みが掴めずに、結果的にその情報はメーカーに伝わらない。その為にメーカーの物創りの目は曇らせられざるを得なくなる。

 さらに問屋は、小売屋が商品を買い取らないために、問屋自身が在庫を持つ事ができずに、小売屋が問屋に求めたことと同じように、今度は問屋がメーカーから商品を借りるようになった。商品在庫リスクはメーカーにしわ寄せされているのである。

                 つづく

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