全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-81 コロナの功罪(呉服業界)その4
ゆうきくんの言いたい放題
もともとメーカーは、織屋にしても染屋にしても商品づくりに専念していた。創った商品は、問屋が買取り小売屋に卸していた。昔は小売店も問屋から商品を買い取っていたので商品の売れ筋情報はダイレクトにメーカーに伝わっていただろう。メーカーはより良い商品づくりに専念できた。
しかし、そういった流通形態は崩れ、メーカーが問屋の役目も果たさなくてはならなくなった。行って見れば、厄介な事はメーカーに押し付けられたのである。
厄介な事とは、営業、在庫負担、売掛の管理等、本来問屋や小売屋が担ってきたことである。
職人は展示会に駆り出され消費者へ販売させられる。売上は職人自身で創れ、と言う事だろう。昔はメーカーが創った物は問屋が買い取ってくれていた。場合によっては問屋との契約によって全て一社で買い取ることもあった。代金は即問屋から支払われたと言う。しかし、問屋が買い取らなくなったので、注文に備えて在庫を持たなくてはならなくなり、売掛の管理もしなくてはならなくなった。
それもこれも業界がしぼんで、金が回らなくなったのに起因するのであるが、結局そのしわ寄せはメーカーに押し付けられてきた。
その結果、メーカーの体力が次第に落ちて、そこにコロナ禍が見舞ったのである。ようやくコロナの出口に差し掛かり、小売屋や問屋はほっとしているところであるが、大元のメーカー、織屋や染屋は如何ばかりかと心配になる。
問屋を介して、
「あの織屋はもうやっていません。」
「あの染屋はやめました。」
と言う話を聞くと、コロナ禍の足跡はこれから呉服業界にボディブローのように効いてくるのではないだろうかと思う。