全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その27)
同じ柄を繰り返さない総丈の帯地も昔織られていました。総丈の帯を織ろうとすると4トントラック一杯分の紋紙が必要だ、と言う話を聞いたことがあります。総丈の袋帯を織るには、どれだけの手間が掛かるか分かりません。
また、丈の長さだけでなく太鼓柄と胴の柄を違えると手間が掛かります。太鼓柄と胴柄を別の柄にする場合もありますし、繰り返しで織った場合、太鼓柄が正立すれば胴柄は横柄になってしまいますので、同じ柄でも胴柄を正立させるためには紋紙を別に作らなければなりません。太鼓柄と胴柄が違っている場合、これも手間が掛かるので高価な帯になります。
職人が創る緯糸一本につき一枚の紋紙をどれだけ必要なのかは帯の価格に大きく影響していました。紋丈の短い柄は、同じ柄が繰り返し繰り返し織られていますが、紋丈の長い帯はとても立派に見えます。もちろん、その他の多くの要素も帯の価値に関わっているのですが、紋丈の長さが帯の価値に関わっていると言う事を覚えておかれてもよろしいかと思います。
ただし、私が知っている西陣はこの40年間の間大きく技術革新が進み、変化しています。当時は殆どが紋紙を使ったジャカード織機でしたが、最新の技術としてコンピューターが導入されていました。
織機はコンピューターに接続して、プログラム通りの柄が織られていました。どのようなプログラムでどのような柄が織り出されるのか私は知りません。コンピューター技術の発達を考えれば、どんな柄でもどんなに紋丈が長くても、同じ手間で直ぐに織れるのかもしれません。そうだとすれば、紋丈の長さはそれ程意味がなくなっているのかもしれません。
帯と言えばもう一つ「つづれ織」についてお話し致します。
「つづれ織」と言う言葉は誰でも知っているかと思います。織り方には様々ありますが、「つづれ織」が一番有名ではないかと思います。また、「つづれ織」には「高級「「高価」と言うイメージもあるのではないでしょうか。
確かに「つづれ織」は織るのが大変で高価なものが多いです。しかし、つづれ織にも価格の違いがあります
つづれ織は、西陣のジャカード織機と違って、経糸が上下して緯糸を通すのではなく、職人が目で見て杼を経糸の間を通して行きます。経糸は強い張力を掛けて引っ張り、緯糸を打ち込む筬はありません。通した緯糸はギザギザにした爪でかいたり櫛のような道具でかいてゆきます。
どの経糸に横糸を通すのかは職人の判断になります。下描きの図案が描かれた紙を下に充てて緯糸を通して行きます。全て職人の判断になりますので、同じ下描き図案を使っても職人によって微妙に柄が違ってきます。全く同じ柄は無いと言えます。
つづく