明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-84 夏物

ゆうきくんの言いたい放題

 また暑い夏がやってきました。昔は「夏が来る」と言うと風情を感じたものです。夏の暑さには参るけれども、四季の一つである「夏」は自然にめぐって来るものであり、夏にしか味わえない風情もあります。

 日本は四季の区別がはっきりとしている、とはよく言われます。春夏秋冬と季節ごとに四季折々の変化があり、それらが生活の一部として溶け込んでいるのが日本の文化であり、着物はその文化を形成する一つです。

 私が幼少の頃は、夏の暑さは今とは違ってせいぜい30℃。33℃にもなると特別に暑い日と言う感覚がありました。それでも今の様に冷房はなく、扇風機も特別な存在でした。そう言う意味では、今とは違った夏の暑さでしたが、そこには夏の楽しみと言うものもありました。

 スイカやトウモロコシを売りに農家のおばちゃんが来るのを楽しみにしていましたし、学校に行けばプールに入れる、と言うのが夏の楽しみです。今は室内プールがあり年中泳ぐ事ができますが、当時プールは夏の楽しみでした。

 最近は、地球温暖化のせいか夏の暑さは異常です。山形はかつて日本一暑い街でした。1933年7月25日に最高気温40.8℃を記録して、2007年に塗り替えられるまで74年間日本最高記録を保持していました。40℃を越えるなど尋常ではなかったのですが、最近は一夏で数回、全国で40℃以上が報告されています。

 夏の暑さは昔とは違ってきていますが、着物の世界はどうでしょうか。

 ご存知の通り、着物は年間3回衣替えをします。袷、単衣、薄物です。この薄物が所謂夏物になります。昔はもっと違ったサイクルだったようです。厳寒時には「綿入れ」と言うのがありました。私も一度旦那衆の蔵の着物を見せて頂いた時、明治頃の物と思われますが、綿入れの振袖を見たことがあります。綿を入れるかどうかも季節の着物を決める要素だったようです。

 また、含み綿といって裾に綿を入れるのも季節と関係があったようです。京都の舞妓さんは年間4回衣替えをすると聞いたことがあります。その中に「含み綿」と言うのもあったようです。

 さて、夏物ですが、どんな時代でも夏物は「涼しい」のが前提です。これは着物だけではなく洋服でも、他の民族衣装でも同じでしょう。ただ前述したように日本は四季の区別がはっきりとしており、とりわけ夏と冬の寒暖差が大きいので日本の着物の夏物、冬物の区別ははっきりとしています。

 着物の夏物、冬物は全く違うのですが、着物は洋服と違って形は皆同じです。フォーマル、カジュアル、冬物、夏物、女性、男性それぞれの着物は基本的に形が同じです。

 振袖と留袖、普段着の紬は袖丈が違います。男性用は身八口がなく袖は縫い塞がれています。女性用は身丈を長く仕立て、お端折をします。と言う様に違いはあっても基本的な裁ち方仕立て方は同じです。

 洋服では夏物の袖の長さが違い半袖となりますが着物では半袖は有りません。

つづく

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