明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-85 スクラップアンドビルド

ゆうきくんの言いたい放題

 最近、店頭で又は電話で着物の整理や処分について相談されることが多くなった。

 先日お出でになった方は、
「終活で着物を整理しているのですが、誰も引き取ってくれないのです。特に黒の紋付と帯はいらないと言われるのです。帯は全くの新品なので誰か締めてくれる人はいないでしょうか。」
暗に「引き取って欲しい」と言うのだけれど、私の店で古着は扱っていない。どこか買い取ってくれる業者を訪ねたら、と薦めたものの、着物の買取りは二束三文でしかない。本人は、買い取ってもらうよりも着てもらえる人を探しているようだったが、黒の着物、帯となるとなかなか難しい。他にも着物があるらしいが小柄な方だったので寸法的にも難しいのかもしれない。

 その方に限らず、着物を整理処分したい人は沢山いる。その処分される着物の量は全国的に見れば膨大な数になるだろう。

 さて、話は変わるが、先日私が経営する「水の町屋七日町御殿堰」のテナントの一つが店を閉めた。明治時代から続く老舗のお茶屋さんである。半年前に退店を伝えて来た。突然の話に驚いたが、後継者がいないので店を閉めると言う。

 水の町屋七日町御殿堰は私の店を含めて9店のテナントがあり、15年前に開業した。そのお茶屋さんは地権者でもあり開業当初からのテナントである。新店舗を造ってから15年で閉店したわけである。

 最近の商店街はテナントの回転が実に早い。新しい店が出来たと思えばいつの間にか閉店した例は少なくない。5年続く店はそう多くないかもしれない。

 そのお茶屋さんは創業明治13年。140年続く老舗である。お茶の販売と洒落た和風喫茶をしていた。今の店舗が出来て15年。8月末で退店なので、先日内装の解体をしていた。

 洒落たお店で、かなりしっかりした内装だったので解体にも苦労したかもしれない。作業員が解体した部材を外に出してトラックに積み込んでいた。解体された太い柱を作業員が担いで出て来た。

 その柱の木口が見えた。鋸で伐られたその木口は、まるで新品の材木のようだった。修正木材の様ではあったが、山で今伐られたばかりの木口の様だった。15年と言う時を経た柱だったがまるで新品。捨てるにはもったいないように思えた。

 建材として使われる木材は寿命が実に長い。頑丈そうな鉄筋コンクリートは、50年もすると次第にひび割れが生じ劣化してしまう。しかし、木造建築は、法隆寺が1300年の時を経てもしっかりと建ち続けている。一般的に木材は1000年間強度が変らないと言う。15年たった柱等それに比べれば新品とも言える。

 この伐られた柱を見て、つい着物を重ね合わせてしまった。

 商店街の店舗は数年で内装は壊され新しくなる。スクラップアンドビルドである。まだまだ使える材料が惜しげもなく解体され捨てられる。

 着物も少なくなったとはいえ未だに2000億円の需要がある。これがどれほど生かされ残されているのだろう。

つづく

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