全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-86 着物絶滅危惧種
先日、お客様から色留袖の注文を頂いた。本来、来店された時に「これは如何ですか」と在庫の商品をお目に掛けるのだが、色留袖の在庫は2枚しかなかった。年齢的にも合わなかったので、取り寄せて後日お目に掛ける事になった。
問屋さんに電話をして、そのお客様の好みに合う色留袖を送ってもらう様に頼んだ。しかし、電話の向こうで、
「色留袖ですか? 今は余り染めていないので・・・。とにかく染屋に聞いてみます。」
と言う答えだった。問屋さんも在庫として色留袖を持っていない。
翌日、その問屋さんから電話が来た。
「何とか3枚見つけたので送ります。」
昔であれば、問屋さんに一声掛ければ、たちまち10枚位は送ってくれたものだった。しかし、3枚では、お客様の要望に応えられるかどうか分からない。そこで他の問屋にも聞いてみる事にした。
このように店の在庫がなかった場合、問屋さんから借りる事になるが、私はできるだけ一社の問屋さんで賄う事にしている。商品を探して送ってもらうのもそう簡単ではない。一社からの商品で間に合えば、確実にその問屋さんの商品を売る事ができる。
しかし、最近は商品が少なくなり、一社の問屋さんだけからではお客様にご満足いただけない場合がある。今回も3枚では折角ご来店頂いて好みの色留袖が選べるようにと他の問屋さんにも声を掛けた。
たまたま来店した問屋さんに聞いてみた。
「色留袖探しているんだけど、お宅にある?」
「色留ですか、うちに二枚あったな。染屋さんにも聞いてみますけれども色留袖は最近売れないので余り染めないんですよ。帰ったら探して送ります。」
やはり色留袖は品薄の様だ。
しかし、色留袖は未だ染められている。需要もまだ少ないとはいえ確実にある。需要があるうちにはまだ染められるだろう。しかし、数が極端に減っているので、我々小売屋が注文を受けて、いざ探そうとすると苦労するのである。
店に来た問屋さんと話していると、色留袖だけではなく、手に入らなくなった商品が他にも沢山あると言う。
「西陣の〇〇織物は、もう九寸名古屋帯は織っていませんよね。」
そう聞くと、
「ああ、あそこの名古屋帯は評判が良かったのですが、今は織っていません。名古屋帯を織っている織屋はもう少ないですよ。××織物ももう織っていませんし。」
名古屋帯を織っている織屋は少なくなっている。
「喪服の黒共帯を織っている〇×は大分前にやめると言うので、その時問屋に頼んで残っている帯を送ってもらって沢山確保しておきました。」
そう言うと、
「黒共帯も織屋は皆廃業していますよ。私も最後に仕入れておきました。」
そんな話が進んだ。
つづく