明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-86 着物絶滅危惧種(その4)

ゆうきくんの言いたい放題

 現在まだ染められ織られている着物や帯の多くが絶滅危惧かも知れない。しかし、それらがまだ存在しているのか、それが何処にあるのか、お客様から要望があれば、どういうルートで入手したらよいのかを考えなければならない昨今の呉服屋である。できるだけお客様の要望に応えて行けるようにしたいと思っている。

 しかし、呉服の絶滅危惧はもっと別な形で業界に襲い掛かって来る。

 表生地や帯地等、絶滅危惧種に指定されるものは多い。しかし、もしも紬の一アイテムが絶滅しても(例えば大島紬が絶滅しても)着物が無くなる訳ではない。他の紬がまだ生き延びているのであれば、紬と言う着物はまだ着る事ができる。帯にしても同じである。佐賀錦を織る人がいなくなっても他の帯を締める事ができる。日本の着物としてまだ生きながらえる事ができる。

 しかし、着物を仕立てるのに必要な目立たない付属品が無くなってしまえば着物は着られなくなる。

 例えば、胴裏地に使う羽二重地が無くなってしまえば袷の着物は仕立てられなくなる。単衣の衿裏地がなくなり単衣の着物も仕立てられなくなってしまう。如何に加賀友禅が染められようとも結城紬が織られていても着物として仕立てられなくなるのである。

「胴裏地が無くなるなんてまさか」と思うかもしれない。私も胴裏の羽二重地が完全になくなってしまうとは思えない。羽二重地の織屋が廃業した話も聞こえて来るし、価格は年々上がっているが早晩市場からなくなる様子は見えない。

 しかし、胴裏地を作る生糸は日本ではもうほとんど生産されていない。日本で生糸を生産して羽二重地(縮緬も同じである)を織れば、とてつもなく高価になってしまう。今までは補助金頼みだったが、その補助金も廃止されると言う。

 それでも中国はじめ海外の生糸によって胴裏地の汎用品は作られている。貿易のサプライチェーンを考えれば、国産は無くなっても生糸はまだまだ海外から入って来ると思われている。

 しかし、中国の生糸市場も年々変化しているらしい。昔は日本頼みで生糸を生産していたが、ヨーロッパの市場に流し、また中国の生活向上によって中国人自らが生糸を消費するようになっている。

 石油の輸入を考えれば分かるように、ある産品のほとんどを輸入に頼り、それも一国または一地域に依存した場合、国間の軋轢や、その地域に紛争が起きると、何時石油が止められるのかとはらはらしなければならない。

 石油の場合は国家存亡の危機をもたらす。しかし、生糸は国を揺るがす産品とは言えないだけに突然輸入が止まる危機をはらんでいる。

 胴裏地が無くなると言う戯言もなまじ嘘八百ではないのである。

 胴裏地と言う仕立てた着物の重要なパーツがなくなると言うのは直ぐに起こる事ではないが、実はもっと小さな着物のパーツが絶滅し始めている

つづく

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