明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-86 着物絶滅危惧種(その5)

ゆうきくんの言いたい放題

 小さな着物のパーツ・・・例えば「羽織の紐かん」。

 紐かんは、羽織の紐を乳に結ぶためのS字型の金具である。羽織の紐によって乳に輪を通して直接結ぶものもあるが、多くは紐かんを介して紐を羽織に結んでいる。羽織を着る人にとっては必需品とも言える。

 男性用は大きく女性用は小さい。素材は、金、銀、赤銅がある。金はフォーマル、赤銅はカジュアルである。小さいけれども造りは実に細かい。乳に通しやすく外れづらくしているのだろうか、先端を丸く加工してある。どうやって作るのかは分からないが小さな工芸品である。

 私の店には紐かんが沢山あった。大分以前に小物の商社が廃業した時に、いらなくなったからと大量に貰ったものがあった。中には箱が汚れている物もあったので、羽織を仕立てた方にはサービス品として差上げていた。しかし、何時頃からか在庫が無くなってきていた。最初に無くなったのは女性用の銀の紐かんだった。男性物はまだ沢山あった。

 その頃(5年位前)にはまだ小物の問屋に紐かんはあった。足りない物を仕入していたが、昨年男物の紐かんが無くなったので問屋に注文したところ、「紐かんはない」「紐かんは作っていない」との返事だった。そして、在庫が少しあるので、それをただで送ってくれるとの事だった。「何故ただで?」と思って待っていると、それは紐かんではなく、羽織の紐を箱に固定する金具だった。

 男の羽織紐は大きく、形が崩れない様に箱に入っている。そして、羽織紐は台紙に固定され、その為に紐かんのような金具で留めてある。その紐かんを溜めておいて送ってくれたわけである。

 その金具は紐かんのようにS字になっているが、造りが全然違う。鋼線を切りっぱなしにしたようで、先が鋭く羽織時に傷をつけてしまいそうである。

 本物の紐かんがもうどこでも作っていないのかどうかは分からない。他の問屋でも探してみようかと思うけれども、そう簡単に見つかりそうにはない。呉服業界は結構狭いもので、情報は直ぐに伝わるので、おそらく紐かんは作っていないのだろう。

 紐かんがなければ羽織の紐は締められないが、今後どうなるのだろう。差し当たり固定金具を使う事になるのだろう。

 小物の他にも、着物を仕立てる付属品も絶滅に瀕している物がある。

 男物の絽の半襟が入り難くなった。全くないわけではないが色数が少ない。半襟は着物を着る上で必需品である。その必需品である男物の絽の半襟が少なくなっている。
「半襟はどの色にいたしましょうか。」

と言っても、お目に掛けられる半襟は2~3色である。何とも寂しい限りである。

 夏物を着る男性は少なくなっている。と言うよりも、極わずかの人かもしれない。半襟のメーカーでは、とても割が合わないのだろうけれども、着る人にとっては一大事である。

つづく

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