明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-87 メリンス襦袢(その2)

ゆうきくんの言いたい放題

 私が普段、袷の着物を着る時には、襦袢はほとんどメリンスである。紋付を着る時には絹の襦袢を着る。夏場は麻襦袢。夏と言っても私は5月から9月までは気温に合わせて麻襦袢を着る事が多い。また、単衣の時期には絹の単衣の襦袢を着ている。メリンスはウールなので寒い時期の襦袢である。

 袷の時期の普段着にはほとんどメリンスの襦袢を着ている私だけれども、洗濯はほとんどしない。洗濯をしないと言うと「不潔」に思われるかもしれないが、私の父も祖父もメリンス襦袢を頻繁に洗濯する事はなかった。

 洗濯しない、と言っても全くしない訳ではない。半衿は、汚れれば解いて洗うか、裏返して使うか、それでも足りない時には新しい半襟と交換する。襦袢を丸洗いするのは数年に一度である。

 洋服の感覚で言うと違和感があると思う。夏場Tシャツは汗をかいて毎日の様に選択する人もいる。私が若く独身の頃、スーツに着るワイシャツは二三日着てから洗濯していたが、結婚してからは女房が毎日洗濯していた。それに比べると着物はなんとも不潔、と思われるかもしれないが、そうではない。和服は洋服と違って汚さない事が前提となっている。

 正絹の襦袢や訪問着など、一度着ると直ぐに丸洗い(洗濯)する人もいる。汚れた訪問着をそのまま箪笥に入れておくと汚れが取れなくなるので訪問着を着た後のメンテナンスは必要である。しかし、それは着物が洋服並みに汚れるからと言う事ではなく絹物ならではのメンテナンスである。

 メリンスは安くメンテナンスに優れていて普段着には無くてはならない素材なのだが、それが姿を消しているのは、やはり普段に着物を着る人がいなくなったからだろうか。

 以前はメリンスの柄見本のカタログがあり、それを見て注文する事ができた。しかし、注文すると、
「この柄は絶版になりました。」
と言う返事が着て、その度にカタログの柄に×(バツ)を付けて行った。その内に×がほとんどとなり、カタログはカタログではなくなってしまった。

 メリンスは着物を着るには重宝である。まだ箪笥の底に眠っているメリンス襦袢も多いと思う。是非メリンス襦袢を箪笥の底から引っ張り出して着て見てはいかがだろうか。

 唯一つ、メリンスはウールなので虫食いに弱い。是非大切にしてもらいたいものである。

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