明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-88 着物と日本人のマナー(その4)

ゆうきくんの言いたい放題

 先日我が家の法事があった。親戚がお寺に集まる。お寺では控室が設けられそこで来客を迎える。

 控室は畳の間である。二十畳くらいの畳の間が二つ。早くいらしたお客様は、本堂に入る前にここでお茶を出して休んでいただく。入り口に受付を設け、そこで花代等を受け取る。

 畳の間には椅子テーブルが並んでいる。受付も椅子テーブルである。昔は畳に座卓と座布団が並べられ、受付も座卓であった。しかし、今はやや低い椅子テーブルである。

 葬式や法事、結婚式など弔事慶事に関わりなく私はいつも紋付袴の着物である。その日も黒の紋付羽織を着た袴姿で受付けの椅子に座りお客様を待った。  

 さて、黒のスーツを着て黒のネクタイをしたお客様がやって来る。受付で座る私の処で挨拶をして待合の椅子に座る。女房が椅子に座ったお客様にお茶を出す。お客様は立ったままで挨拶をし、私も椅子を立って挨拶する。畳の間であるが、一連の動作はごく自然である。

 畳の間では、洋装であろうと和装であろうと畳に座って挨拶するのが礼儀である。しかし、ここでは立ったままの挨拶が極自然に行われる。もしもこの時、私が受付の椅子を立って畳に座って頭を下げて挨拶するのは何ともおかしい。

 問題は畳の間(和室)かどうかではなく、椅子テーブルなのか座卓なのかのようだ。

 「座布団が敷いてあれば座って挨拶する、畳の間でも椅子テーブルであれば立って挨拶する。」と言うのが現代のルールのようだ。

 そもそも畳の間にテーブルが持ち込まれたのは何時ごろから、どういう経緯なのだろう。

 明治維新の時には、畳の間に無理やりテーブルを持ち込み、欧米に肩を並べたふりをしていたらしいけれども、これはあくまでも「無理やり」である。私が子供の頃には洋間などなく、全て畳の間だったが、(私達)子供の部屋には勉強机が置かれた。他の間は全て座卓である。その頃、勉強机はほとんど椅子テーブルだった。しかし、子供の私の目にも机の脚が畳に直接置かれているのを見て、畳が傷めるような気がして違和感を感じていたことを覚えている。畳と椅子テーブルは、もともと相性が悪い。

 しかし今料亭ではほとんど椅子テーブルである。畳で使う椅子は四本脚ではなく、畳を傷めない様に二枚の板になっている。私は座布団の方が落ち着くのだけれども世の中のニーズがそのようになっているらしい。

 和式、洋式と言うけれども、既に西洋文化は日本の文化に入り込んでいる。それらが日本の文化と入り混じって新しい文化を創っている。それでも、伝統的な文化は厳然と守る、いや意識しなければならないと思う。和室では座って挨拶するのが日本文化の原点である。

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