全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-88 着物と日本人のマナー(その2)
私がサラリーマンになった頃、営業で他社を訪問する時のマナーを教えられた。
今ビジネスの世界では、ほとんどが洋式である。会社を訪問すれば洋室に案内される。和室に案内されるのは極稀である。
ビジネスで他社を訪問した時、大きな会社であれば受付で来社の理由を話し、受付の方に取り次いでもらう。受付(大抵は女性)の人に応接室またはそれに準じた商談室に案内される。応接室であればソファーが置いてあり、客は長椅子に座って待つように云われる。
案内の女性は、
「ただいま参りますので。」
と言って部屋を出る。この時、ソファーに座って待ってはいけない。(と、きつく教えられた。)あくまでも商談の相手がいらっしゃるまでは立って待たなければならない。
先に案内の女性がお茶を運んでくる場合がある。女性は、立っている私を見て
「どうぞ、お掛けになってお待ちください。」
と着席を促す。その場合は言葉に従って着席して、女性が退出したら再び立って待つ。
この「立って待つ」と言う時間が大切なのだとも教えられた。
応接室には色々な物が飾ってある。壁には絵画、また工芸品の置物が置いてある。それらの物を待つ間に見ている。あるいは見ているふりをしている。また、階上の窓のある部屋であれば外を眺めて待つ。
いざ交渉相手が入室し座るよう勧められて初めて着座する。話を始める時に初めての訪問であれば話は切り出しにくい。そこで最初に話題にするのは、待っている間に得た情報である。
「この絵は〇〇さんの絵ですか?」
「この置物の皿は久谷でいか、伊万里ですか?」
また
「素晴らしい眺めですね。〇〇山が一望に見えますね。」
などと当り障りのない話をしながら交渉相手の性格を探りながら本題に入る。
洋室に於いて「座る」と言うのはそれだけの意味がある。一言で言えば洋室では目上の人が座り目下の人は立っている。目上の人が立ち、目下の人が座って話すのはマナー違反である。そう言う意味で石破首相の行状が指摘されているのだろう。
しかし、和の世界では全く逆の仕来りである。
洋室と同じ状況で和室に訪問した時のマナーは次の様である。
つづく