全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-89 着物・・時代と共に(その17)
消費者セールの一番の弊害は価格である。小売上代(消費者が買う価格)が非常に高くなってしまうのである。そのからくりは次の通り。
消費者セールの商品価格は開催する問屋が決定する。小売上代は小売店に渡す(卸す)価格を元に設定される。小売屋は上代価格の〇割(その消費者セール毎に設定される)で問屋から商品を買い取る。小売上代との差が小売屋の取り分である。
通常(「昔は」と言っても良いかもしれない)小売屋は問屋から商品を買い取って上代価格は小売屋が決定する。私の店では、今でも問屋から商品を買い取り上代価格を決めて店頭に並べている。呉服の場合、小売上代は小売屋が決める。従って同じ商品でも、あちらの店とこちらの店では価格が異なる事がある。と言うよりも小売屋によって価格が違うと言った方が良いかもしれない。
私が商品を仕入れる時は、問屋で山程の商品を一反一反見て、色柄や品質も含めて売れそうな商品を選び出す。そして、それぞれの卸し価格を聞きながら、その値段で売れるかどうか検証しながら仕入れる商品を選んで行く。価格は安い方が売り易い。また、他の小売屋さんよりも高く売る訳には行かない。商品を絞り込んだ上で、問屋と価格交渉をする。問屋の言い値より如何に安く仕入れられるかどうかが仕入れのポイントである。
しかし消費者セールの場合、価格は全て問屋が決める。卸値の交渉など入るスキもない。卸価格は問屋の言い値で設定し、それに一定の割合を上乗せしたのが上代価格になる。消費者セールにおける卸価格は問屋が言い値で決めるので、消費者セールの上代価格は問屋から仕入れて店で売る商品よりも高額になる。
加えて消費者セールは豪華な会場で行う事が多い。その経費はバカにならない。それらの経費は全て主催する問屋が負担する。会場費だけではなく豪華な案内状(DM)、会場での接待費など通常問屋が小売屋に商品を卸す時には発生しない経費が莫大に掛かってくる。それらの経費は当然ながら商品の価格に上乗せされることになる。
商品価格を押し上げの原因は他にもある。
いくら大きな問屋と言えども、広い会場をいっぱいに出来る程商品を持っていない。昔は多くの商品を在庫として持っている問屋もあったが、最近は問屋も商品を染屋織屋から借りるようになった。消費者セールにおける小売屋と問屋の関係が問屋と染屋織屋の関係になっている。
すなわち消費者セールの為に染屋織屋は商品を問屋に貸して会場に並べる。問屋に渡す価格は染屋織屋の言い値である。染屋織屋→問屋→小売上代と言う一連の流れの中で、価格決定のチェック機能は働かない。それぞれが言い値で価格を設定する。
「この商品はいくらで消費者に売るのが妥当」
と言う考えはなく、
「いくらで仕入れるから経費とマージンを上乗せして」
と言うように機械的に小売上代が決定される。それが一般的常識的な価格から大きく離れても一向にチェックは働かず法外な上代価格となって展示場に並ぶのである。
更に上代価格を押し上げる原因は他にもある。
つづく