全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-89 着物・・時代と共に(その18)
大きな問屋と言えども、全ての染屋織屋と取引がある訳ではない。消費者セールでは呉服のアイテムを網羅して商品を並べなければならない。
問屋には多くのアイテムを扱う総合問屋と特定の商品を扱う専門問屋とがある。総合問屋は振袖から訪問着、小紋など表地と言われる着物から襦袢、コート地、そして袋帯から名古屋帯、半巾帯など全般に渡って商品を揃えている。また、胴裏や八掛など裏物と呼ばれる付属品も扱っている。
専門問屋は、帯だけを扱う帯問屋、紬だけを扱う問屋、染物だけを扱う問屋など比較的規模は小さいが、専門的に商品を扱っている。
消費者セールは、広く商品を展示しなければならないので、総合問屋は一件で催せるけれども、専門問屋の場合また小さな問屋の場合は、数件が集まって消費者セールを行う事が多い。染物の〇〇問屋、帯は××問屋、織物は△△問屋と言う様に商品を持ち寄って消費者セールを行う。
しかし、総合問屋と言えども、また何軒かの専門問屋が集まっても全ての商品アイテムを揃える事はできない。各問屋が取引する染屋織屋は限られており、商品構成に穴が開いてしまう。
総合問屋が消費者セールを行う場合、いくら総合問屋と言っても広い会場を満たすだけの商品を持っていない。その場合、メーカーや産地問屋から商品を借りて間に合わせる。しかし、それでも商品構成に穴が開いてしまう。
例えば、雨コートを揃えたいと思っても、雨コートのメーカーとの取引は無く取引先の産地問屋でも雨コートは扱っていない事もある。そう言った場合は取引先の産地問屋に調達してもらう事になる。
つまり総合問屋A社の取引のある産地問屋はb社c社d社である。しかしb社c社d社は雨コート扱っておらず、扱っているのは取引のないe社である。その場合、A社はe社と近しい関係にあるd社に頼んで雨コートを調達する。d社がe社から雨コートを借りてA社の催す消費者セールに出品するのである。
d社もe社も同じ産地問屋である。このような問屋間で商品をやり取りする事を仲間卸と呼んでいるが、呉服業界ではそう珍しい事ではない。しかし、他の業界では考えられない事と思う。
車の業界に例えて言えば、ホンダの車を欲しがっているお客様にトヨタのディーラーがホンダのディーラーから車を買ってお客様に納めるようなものである。ホンダの車はホンダのディーラーから買えば通常の価格で購入できる。しかし、トヨタのディーラーから買えば購入価格は上乗せされ高い物となる。
A社がe社から雨コートを買えないので間にd社が入る。D社のマージンが上乗せされるのである。「一社が間に入るだけで・・・」と思われるかもしれないが、e社→d社→A社→呉服屋→消費者の価格設定は、前に書いた通り言い値で設定される。私の店で問屋と交渉して仕入れて設定した価格とは大きな開きになる。
つづく