全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-89 着物・・時代と共に(その2)
毎年この時期になると成人式があり、つい成人式、振袖について考えてしまいます。成人式、振袖も昔とはずいぶん変わったものです。
成人式は、子供と大人の節目として昔の元服が元になっていると言われていますが、現在の成人式は戦後始まったものです。
私が成人式を迎えた時分は、女性が振袖、男性はスーツと言うのが定番でした。私も呉服屋の息子ながら着慣れないスーツで成人式に臨んだのを覚えています。成人式に振袖と言うのは誰が決めたのか知らませんが一応全国的に認知されているようです。
「成人式に振袖を」と言うのは呉服屋にとっては格好の商機です。全国の呉服屋さんが成人式用に振袖を販売しました。しかし、「成人式は振袖」と言うルールが揺らいだ時期もありました。
私が京都の問屋に勤めていた時、地方の呉服屋さんを廻っていた時の事です。ある呉服屋さんに行って成人式、振袖の話をしました。何とか振袖を販売しようとしましたが、その呉服屋の御主人がぽつりと言いました。
「うちの町では振袖は売れないんですよ。」
意味が分からずに聞くと、その町の成人式では振袖を着てはならないと言う。成人式は皆普段の洋服で参加すると言う話でした。
よくよく聞くと、成人式で豪華な振袖を着ると、振袖を持っていない人や買えない人が可哀そうなので皆で洋服にすると言う決まりだそうです。いわゆる当時の左派系の人達による町の決定らしい。他にも「成人式は普段着で」と言う呼びかけをする市町村もあったと聞きます。
そのような市町村は極一部だったかも知れませんが、そう言った波が振袖を襲った時があったのは事実です。
振袖の販売は呉服屋が担ってきましたが、それも時代と共に変わって来ました。
前述の「振袖を着ない町」がある一方で、振袖の販売は過熱していきました。需要が低迷している呉服業界の中に有って振袖販売を重視し、それに特化する業者が現れて来ました。
成人予定者を対象に振袖販売会を催し販売する。女子の成人の多くが間違いなく振袖を着るという前提に立てば振袖の販売を絞り込むことができるのですから商売としてはこれを見逃す手はありません。
私の店でも昔から振袖は扱ってきました。今でもご年配(私よりも)の方から、
「昔、お宅で振袖をつくったんですよ。」
と言われる事もしばしばです。
振袖は、他の着物と同じようにお客様に販売してきた。小紋を求められる方、訪問着を探される方、喪服を新調する方と同じように、娘が成人を迎えるからと来店される方々だった。
しかし、振袖は呉服の中に有って次第に特殊な存在になって行った
つづく