明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-89 着物・・時代と共に(その21)

ゆうきくんの言いたい放題

 消費者セールは問屋毎に度々催され、次第に過激になって行った。
「過激」と言うのは、消費者を呼び寄せる為に内容が派手になって行った。会場はより豪華なホテルや料亭を使い、消費者に対する接待も派手になって行ったのである。小売店もそれに乗り、京都で開かれる消費者セールや鹿児島で開かれる大島紬の販売会に招待して売り上げを確保しようとした。

 振袖を売るのに親子で京都へ招待すると言う事も行われた。しかし、その運賃、宿泊費、料亭での接待費用などは商品価格(振袖の価格)に上乗せされているのは明白だった、それでも消費者は消費者セールに誘われていた。そこでは、「適正な販売価格」は無いに等しいものだった。

 そのような消費者セールが盛んに行われたのは20年位前だっただろうか。消費者セールは莫大な経費が掛かり、それは消費者に転嫁されていた。消費者が十分に集まれば採算が採れたのだろうが、集客が難しくなり、呉服全体の市場が縮んで行く中で、次第に派手な消費者セールは少なくなっていった。

 消費者セールが下火になってくると、再び小売店による展示会が盛んになった。ただし、以前とは違った巧妙な展示会があちこちで開かれ始めた。

 ある時新規の問屋さんが来店して話をしていた。そして、次のようなことを言った。
「御社の展示会では『確約取』はしていますか?」
 私の店では、だいぶ前から展示会は行っていなかった。そして「確約取」と言う言葉が分からなかった。聞いてみると、確約取とは次のようなものだった。 

 展示会に先立って社員がめぼしい客の家を訪問して展示会への来場を誘う。そして、その時「確約品」と呼ばれる商品を持って周る。「確約品」とはブランドバックであったり、着物の小物、健康器具や食品など。それらの「確約品」と称する商品を格安の価格でお客様に提示する。見た目に五万円もするかと思われるバックを五千円で販売する。販売と言っても、その場で商品を渡すのではなく代金を預かり、展示会に来場された時に商品を渡す。お客様は、すでに「確約品」の代金を払っているので展示会にその「確約品」を受け取りに行く。

 呉服店の狙いは、お客様が展示会場に足を運んでくることである。展示会にいらしたお客様には、あれこれと着物や帯を勧める。中には「確約品」だけを受け取って帰るお客様もいるが、歩留まりを考えれば着物や帯を買って帰る人もいるのだろう。とりあえずお客様に展示会場に来ていただく手法として実に巧妙な手段である。

 呉服の展示会の変遷を見て来たけれども、展示会を始めた頃から現代まで、その手法、目的が全く変わってきている。

 当初の目的である、着物を作りたいお客様により多くの商品の中から選んでいただきたい。その機会を創る為の展示会であったが、次第に客を集める手段に代わってきたように思える。

つづく

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