全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-89 着物・・時代と共に(その4)
成人式での振袖の変化はもう一つ、貸衣装レンタルの登場である。
貸衣装と言うのは昔からあったけれども、成人式で振袖レンタルが盛んになったのは何時の頃からだろうか。私が成人式の時(昭和51年)には、それほどではなかった。振袖屋さんが全国で盛んに販売していた時もレンタルの比率はそれ程でもなかったように思う。昔ほど振袖屋さんが目立たなくなったのは、レンタル振袖と反比例しての事だろう。
レンタル振袖が盛んになって来た背景には、着物に対する考え方の変化がある。
昔は母や祖母が娘の為に振袖を作ってくれた。私の店にも母親やお祖母ちゃんと来店されて振袖を求めに来るのが多かった。お祖母ちゃんは、孫が試着した振袖姿を見て目を細めていた。そうして娘用の振袖を仕立てて行った。
その背景には、着物がまだ生活の身近にあり、振袖を着る機会も多かった。お正月や兄弟、従弟の結婚式。友人の結婚式にも振袖を着る人も多かった。
私の友人の結婚式に出た時の事である。私は新郎の友人で、他にも友人が多数参列していた。新婦側の友人は何人か振袖を着ていた。その中にとても美人で可愛らしい人がいた。私と同じテーブルで隣に座っている友人がそれに目を付けた。
「あの子かわいいんねが」(「あの子かわいいね」山形弁)
しかし、その女性が新婦友人としてスピーチに立ち、
「・・・・・・、私も間もなく結婚しますので・・・・。」
と言った瞬間。
「ありゃー、残念。」
と隣の友人が声を発していたのを覚えている。必ずしも振袖のせいとばかりは言えないけれども、振袖姿の女性はとてもチャーミングに見えたのは間違いなかった。
誂えた振袖を何回着る機会があるかは、人によって違うだろうけれども、昔は成人式だけと言う事はなかった。振袖を着る度に、「これは私の振袖」と言う気持ちだっただろう。
以前私の店で振袖を仕立てたお客様で何度も丸洗いやシミ抜きに持ってこられる方がいる。その方も祖母が見立てた振袖を大切にしている。同じ娘が着たにしては、随分長い間振袖をメンテナンスしている。聞いてみると、本人の後妹が着て、そして今は娘が着ると言う。祖母が誂えてくれた振袖を大切に着ているのである。
しかし、今は振袖を何度も着る機会が無くなった。というよりも「機会があっても着ない」というのが真相だろう。着物、振袖に対する気持ちは希薄になり、
「どうせ一回しか着ないのならレンタルで」
という人が多くなりレンタル振袖が増えているのだろう。
つづく