明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-90 小売店、呉服店の役割(その2)

ゆうきくんの言いたい放題

 最近文房具屋自体少なくなったが、その店は店頭売り外商共に力を入れ、店にはいつも小学生、中学生からビジネスマンに至るまで文房具を買いに来ていた。品ぞろえも良く、あらゆる商品が並んでいた。

 私は店のカウンターで、
「これと同じ熨斗紙をください。」
そう言って持ってきた見本の熨斗紙を出した。カウンターの店員さんは、見本の熨斗紙を手に取って、
「はい、わかりました。」
と言って熨斗紙が入っている引き出しを開けて探していた。

 しかし、その熨斗紙はなかった。
「すみません、ちょっと切らしています。」
私も黄色の水引はないかもしれないとは思っていた。
「それじゃあ、取り寄せてください。」
店員はカタログで商品を確認してメーカーに問い合わせた。
「注文は100枚単位です。納品は一週間後になります。」
私が必要なのは20枚である。納品に一週間も待ってはいられない。
「とても一週間は待てません。キャンセルします。」
そう言って店を出た。

 実は、その文房具屋は私の親戚で、事務用品はいつもその店を使っていた。熨斗紙に関しては、他に紙専門の店があった。紙専門と言うのは、昔で言う「水引屋」だった。「〇〇祝儀堂」と言う店名の専門店である。

「紙屋」と言うのは文房具屋とは別に昔は数軒あった。熨斗紙や奉書、賞状、そして水引や水引を組んだ結納用品を売っていた。山形では見渡したところその一軒しかない。

 その紙屋に駆け込んで、持ってきた水引を出して、
「これと同じ熨斗紙が欲しいのですが。」
そう言うと白髪の老女が、引き出しからいくつかの熨斗紙を出してきて、
「はい、これですね。大きさは・・・。」
同じサイズの熨斗紙を出して、
「何枚お入り用ですか。」
私が、
「二十枚下さい。」
と言うと、慣れた手つきで熨斗紙を20枚数えた。
「はい、176円です。」
1枚8.8円である。僅かな買い物であったが、私には大助かりだった。その店では、ありとあらゆる熨斗紙を扱っている。そして、それらは一枚単位で売られていた。
「いや、助かりました。」
そう言うと、その年老いた女性は、
「ええ、夫婦で細々と商売しています。」
そう応えた。

つづく

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