明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-90 小売店、呉服店の役割(その3)

ゆうきくんの言いたい放題

 私にとってはとても有難かった。直ぐにでも納めなければならない弔事の引き物の熨斗紙が手に入ったのである。文房具屋で取り寄せてもらえば一週間はかかった。それも必要ない50枚ロットである。どんな小さな注文であっても、必要な物は何でも取り揃え、小ロット、一枚一個から売ってもらえる。それが昔からの専門店の役割である。

 最近は昔と違って便利な世の中になったと言われる。車で郊外に行けば大型のショッピングセンターがある。インターネットでは何でも探す事ができ、注文すれば直ぐに手に入る。そう思っている人がほとんどだろう。しかし、それらの便利さの裏で失われている本当の便利さがある事を忘れてはならない。

 最近本屋の数が減っていると言う。昔は町中に本屋があった。今考えればよくそれだけの本屋が成り立っていたと思える。

 子供の頃は近くの本屋さんに本を買いに行った。買う本は決まっており週刊の少年雑誌や漫画の単行本等。学校で使う少し専門的な本になると、街の中心部の大きな本屋さんに行った。大体はその本屋で買えたが、ない時には取り寄せてもらう事もあった。今とは違って取り寄せるには一週間程掛かったと思う。

 当時、どこの本屋さんでも少年少女の習慣雑誌は発売されると店頭に山積みされていた。また、ベストセラーや芥川賞、直木賞の作品も平場で山積みされていた。本屋さんにとって日々よく売れる本は週刊誌や雑誌、ベストセラーの本である。しかし、専門店としては広く専門書も扱わなければならない。

 岩波文庫を200冊並べたとしてもどの位売れるのだろうか。中には足の速い本もあるかもしれないが、文庫を飾ってはいるけれども足の遅い本もあるはずである。それでも万に一つの需要に専門店は対応している。

 最近はコンビニエンスストアーが増え、若い人を中心に支持を集めている。そのコンビニエンスストアーでも本を扱うようになった。週刊雑誌が中心だが、一頃ベストセラーや話題の本が売られていた。(最近は見なくなった。インターネットにシフトしているらしい。)

 当時、本屋に勤務する友だちが言っていた。
「今、雑誌が売れなくなっているんだよ。ベストセラーや受賞作品も昔ほど売れない。皆コンビニで売っているから。」
と嘆いていた。

 雑誌やベストセラー本がコンビニで買えるのは、消費者にとってよい事である。わざわざ本屋に行かなくても近くのコンビニで購入できる。しかし、それが為に専門店の本屋では売上が下がる。それも「良いとこ取り」で売上が奪われている。売上が下がっても専門店ではあらゆる専門書を揃えておかなければならない。

そのせいばかりではないかもしれないが、中小の本屋の多くが姿を消した。かつて私の店の近くには7店の本屋があったが、今は1店のみである。近くで専門書あるいは雑誌以外の本を買える店が無くなってきている。

 専門書はインターネットでも買える。目当ての本が町の本屋にあるかどうか探す間もなくインターネッでは即座に検索できる。そして、注文すれば送料なしで送ってくれる。とても便利である。近くに本屋がなくてもどんな本でも手に入るのである。

 私は本を買う時には、本を2~3ページ捲って内容を確認し、また類似の本も参考に見ながら購入する。実店舗の本屋ならではの所業である。私にはタイトルだけで注文するのは気が引けるのだが、今の若者やインターネットに成れている人達は、そのような所業は必要ないのだろう。

つづく

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