全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-91 現代白生地事情(その4)
その頃は白生地の生産需要のピーク(年間1,000万反)が過ぎていたとは言え未だ数百万反織られていた時代である。現在の10万反に比べればアジアの諸外国が参入する余地は十分にあったのだろう。
そして、その後白生地に押されるハンコに「精錬日本」というのが目立ってきた。最終工程の精錬を日本で行ったと言う証である。
日本人にとって「日本」と言う二文字は信頼の証として受け止められる。養蚕から精錬まで全て日本で行ったわけではないが、「精錬日本」のハンコは消費者を安心へと導く呪文となる。「精錬」と言う言葉自体を知らない消費者も多いけれども「制作が日本人の手で行われている」といった印象を与える。
さて、「日本の絹」証紙も同じことが言える。いや、「精錬日本」よりもずっと強い印象を消費者に与えている。「精錬日本」のハンコは間違いなく日本で精錬が行われた事を意味している。もしもそうでなかったら不当表示となる。
しかし、「日本の絹」は何を意味しているのだろう。「製織日本」であればその縮緬は日本で織られた事を意味している。私はその方がすっきりしていると思えるのだがどうだろうか。
「日本の絹」証紙は、決して消費者を欺こうとしているのではないだろう。年間1000万反の生産が10万反、すなわち百分の一に減少しながら、まだまだ日本の白生地の織屋さんは頑張って製織、精錬をしていると受け止めるべきかもしれない。
私が話した織屋さんは、既に日本の繭には拘ってはいなかった。むしろもっと大きな視点で日本の絹織物を織り、それを広めて行こうとしているようだった。
呉服の需要が減り縮緬の生産は百分の一に落込み、国産の繭が無くなり、糸のほとんどを輸入に頼らざるを得ない今日に有って、白生地の織屋さんには頑張って日本の縮緬、絹織物を残してもらいたいと思う。