明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-97 きものの知識「型糸目友禅」その2

ゆうきくんの言いたい放題

 型糸目の技法が確立して製品化されたのは何時からなのかは分からない。私が初めて、それと知ったのは昭和50年台後半。あるいは昭和40年代には確立されていたのかもしれない。

 最初の頃の型糸目の友禅は、糸目がとても太く見えた。余程下手な糸目士が引いたと思われるような不自然な太さだった。

 型糸目の型はシルクスクリーンが使われる。細い糸目の型を作るのも難しかったのかもしれないし、余りに細い型では、糊が巧く一様に入らなかったのだろう。

 その頃の型糸目で染められた友禅は、糸目がやけに太く、それでいて糸目の太さは一様に綺麗であった。しかし、逆にそれがやけに不自然に見えた。着物を広げる問屋さんの、
「これは型糸目ですから。」
と言う説明に納得していた。

 しかし、技術が進歩したのか、細い糸目の物が出回るようになった。

 ある時、振袖を頼まれて探していた。問屋さんに言うと一枚の振袖を持ち込んできた。素晴らしい振袖だった。値段を聞くと、かなり高価であったが、思ったよりも安かった。
「えっ、そんなもん?」
と問屋に聞くと、
「値段の割に良いでしょう。型糸目で染めたんです。そこは、とても研究熱心な染屋さんなんです。」
にっこり笑ってそう言った。
「その値段だったらお客さん気に入るよ。」
そう思ってお客さんに見せると、直ぐに気に入って買ってくれた。もしもそれが手描きだとしたら、二倍以上の値段だったろうと思う。その後、型糸目の技術は広がり、多くの商品が出回るようになった。

 それらの中には、手描きと見まがうような物もあれば、型糸目と一目で分かるような物もあった。そして、手描きの友禅が少なくなり、逆にそれが目立つようになった。やはり比べて見れば、手描き友禅と型糸目友禅の違いは明らかだった。それは手描きの良さが引き立てる物だった。

 それでは手描きの友禅は、型糸目友禅とどこが違うのか。

 まず友禅の命とも言え、また型糸目が工夫した糸目そのものの違いである。型糸目は、型によって糸目の太さに違いはあるが、いずれも太さの一様な綺麗な糸目である。一様な綺麗な糸目を引くのが糸目士の業なのだが、それ以上に型糸目の糸目は綺麗である。しかし、比べて見ればいくら型糸目の糸目が一様で綺麗であっても、「美しい」と思えるのは手描きの糸目の「いくらか揺らぎのある糸目」の方なのである。完璧に近い糸目でありながら、いくらかの誤差を含んだ糸目の線が真に美しいと思えるのである。

 また、挿してある色の違いもある。型糸目友禅の場合、色も型で機械的に染める物が多い。実に綺麗に、「卒なく」染めてある。しかし、手描きの友禅は、手で色を挿すので、いくらか暈されたように染められる箇所もある。やはり、完璧な中に手業ならではの揺らぎが感じられるのである。

つづく

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