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全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-97 きものの知識「型糸目友禅」その5

ゆうきくんの言いたい放題

 さて、型糸目は振袖にも多用されている。最近手描きの振袖と言うのはほとんどなくなってしまった。少し古い統計だけれども、令和元年12月~令和2年11月の京友禅振袖の生産数量は71,325枚。その内手描きは819枚である。僅か1.15%である。

 現在振袖の生産量は、京都よりも十日町の方が多いけれども、十日町で手描きの振袖はほとんどないと思う。型糸目の振袖が主流ではないだろうか。

 手描きに代わっているのは型糸目だけではなくインクジェットで染められた振袖が最近多くなっている。先に揚げた統計では、型染(型糸目を含む)が18,951枚、インクジェットが51,554枚である。最新の技術で考え出された型糸目も更に進んだインクジェットにより劣勢に立たされている様に見える。

 しかし、転じて考えれば、インクジェットは所謂プリントの範疇である。相対的に型糸目の振袖は、その地位が高まっているのではないだろうか。

 振袖の場合、総柄が多い。総柄ではなくても付下げよりは柄が格段に多い事はお分かりいただけると思う。それ程柄が多いのであれば、型糸目と言えども高額になってしまうのではないかと思われるだろう。確かに振袖は、特に総柄の振袖は柄が格段に多い。それを型で糸目を入れるのだが、実は同じ型を何度も使っている。「何度も」と言うのは、先に書いた左右の袖の柄を同じ型で糸目を入れる事もあるが、他の振袖の型を使う事もある。

 以前、十日町の染工場に伺った時に説明してくれた。振袖は、おめでたい柄が多い。訪問着とは違って使用する柄が似通っている。訪問着の場合は、山水、花鳥、幾何学、正倉院、器物、有職、縞格子、人形、また創作柄など、ありとあらゆる題材が用いられる。

 振袖の場合も数多くの柄が用いられるが、宝模様、熨斗、扇面など多く使われる柄がある。そう言った柄の型を流用しながら、全体として違った柄の振袖を染めている。

 流用と言ってしまったが、柄を考える人はとても苦労するのだろう。異なる振袖柄の型を組み合わせながら新しい振袖を創って行く。相当大変な仕事である。そのような苦労を経て振袖は染められるのである。手描きで染めれば数百万円すると思われる柄の振袖が十分の一、あるいはそれ以下で染められるのである。染屋さんの苦労には頭が下がる思いである。

 型糸目の手法は手描きの亜流と思われがちだが、これはこれでれっきとした友禅の手法と思う。何よりも、安価に友禅を染められるのは大きなメリットである。しかし、最近はそのメリットも薄れてきたようである。

 型染のメリットは、型を何回も使える事である。型を作ってしまえば、同じ柄を何枚も染められる。一枚一枚手で描いている手描き友禅とはまるで手間が違う。それ故に、型友禅、型糸目友禅は安価に制作する事ができる。

 しかし、着物の需要が減った今日、生産数が激減している。以前は、何十枚何百枚と使用した型がそれ程使われなくなった。型を作るにも手間とコストがかかる。そのコストを償却するには相当の枚数を染めなければならない。一枚の訪問着を染めるのに、わざわざ型糸目の型を作っていたのではとても採算が採れない。

 現在柄の着物が型糸目の型を使って何枚染められているのかは分からない。昔に比べれば確実に減っているだろうし、採算性も悪くなっていると思う。

つづく

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