全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-97 きものの知識「型糸目友禅」その6
型糸目の技術は着物の染織に於いて革命的とも言える技術である。友禅を安価に染め、着物の価格を大きく引き下げる事ができた。しかし、大量に染めると言う前提が崩れればコストダウンの効果も下がってくることは前に述べた。それでも型を多用する事によってコストダウンを図ろうと言う努力も行われている事も述べた。手描きとは質的に劣るとはいえ、今着物の染色の世界ではなくてはならない技術となっている。
しかしながら、その型糸目のメリットが呉服業界にとって悪用されているのも事実である。
型糸目の技術は進化して細い糸目を引けるようになった。初期のころの太い糸目ではなく、熟練の糸目職人の糸目と変わらぬ太さで引く事ができる。良く見れば職人による糸目とは違うのだけれども、素人目には「これは手描きです。」と言われれば、そのように見えてしまう。
手描きと型糸目の区別がつかない、本流と亜流の区別がつかないと言うのは、現代の着物の世界では友禅に限らない。手織りと機械織、本型染と捺染染など素人目には区別がつかなくなっているものが多い。
これは型糸目のように現代の染織技術が高度化した事にもよるが、本当の原因は着物、染織が人々(日本人)の生活に縁遠くなったことにある。ワインを飲んだことのない人に
「これはフランスの最高級のワインです。」
と言ってテーブルワインを飲ませれば、それを鵜呑みにするかもしれない。それと同じように着物を着たことのない人見た事のない人にとって着物は、説明されたとおりに受容してしまう。
昔は日本人皆着物を着ていた。生まれた時から良きにつけ悪しきにつけ皆着物、日本の染織に触れながら育ってきた。そんな環境で育てば少なからず着物を見る目は養われていたはずである。
現代の着物の環境はそんな中に有り、手描きも型糸目も区別がつかなくなってきている。
本来着物を商う呉服屋は、忘れ去られた日本の染織を素人である消費者に詳しく説明し、消費者の判断を仰ぐのが務めである。
しかし業界では、型糸目を手描きと称して売られている話もよく聞く。手描きよりは遥かに安価に染める事の出来る型糸目の訪問着を有名な作家物と称して売るのはその典型である。
着物が今後とも日本人に愛される為にも、現代の人達にも着物を見る目を十分に養ってもらいたいと思う。その為に型糸目の知識も正しく知って頂きたいと思うのである。
