全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-99 きものの知識「和装仕立」
呉服屋は、お客様の体格に合わせた寸法で着物を仕立てて納めている。そう言う意味で呉服屋はメーカーでもある。
反物を裁断して縫い合わせる。一着の着物の仕立てには様々な技が用いられている。私は、着物の仕立て替えを頼まれて着物を解く事もあるが、着物の仕立ては実に複雑に、そして巧妙に縫われているのがよく分かる。
洋服でもオートクチュールともなれば、採寸から裁断、縫いに至るまで複雑で根気のいる技術を要するが、和服は洋服とは全く違った技術が求められる。
和服は直線裁ちが基本である。洋服のような曲線に裁つ事は非常に少ない。約13mの生地を直線に裁って縫い合わせるのである。
洋服と和服の仕立ての違いは、裁ち方や縫い方だけではない。和服の場合は、解けば元の一枚の布に戻ってしまう事にある。戻ると言っても、一度裁った生地が元通りの反物になる訳ではないが、それぞれの部材はそのまま仕立て替えに使えるのである。
仕立替えの動機は様々である。
・体形が変わり寸法を変更する場合。… 身巾や身丈等
・母から子へ等他人の寸法を自分の寸法に直す場合。
・他の着物、襦袢と寸法を統一させる場合。… 着物を複数の寸法で仕立てていた場合。袖丈を変える、肩裄を変えるなど。
・着物の種類を変えて仕立てる場合。… 小紋を道行に等
他にもいろんな動機で仕立替えをするけれども、和服の場合普通それらに対応できる、と言う洋服とは違った利点がある。
昔は大切に着物を着て、何度も仕立替えをしながら擦り切れるまで同じ着物を着ていた。擦り切れてどうしようもなく成れば、要尺が少なくて済む子供の着物に仕立替え、最後は雑巾になるまで使ったと言う話も聞く。
着物は完全循環可能なエコな衣装なのである。
着物は異なった寸法に仕立が可能だと書いたけれども、それにはそれ相応の対応が必要である。対応と言うのは、最初に仕立てる以前の対応である。昔の人は着物を新調する時にはそういう対応をした上で着物を仕立てていた。
着物の寸法には「上がり」と「裁ち切り」と言う二つの寸法がある。
「上がり」とは、仕立上がった時の寸法である。通常「仕立寸法」と言っているのはこの「上がり」寸法である。
もう一つの「裁ち切り」とは反物から裁つ寸法である。反物を裁つ場合、通常端から「袖を二枚」「見頃を二枚」と裁って行く。その裁つ場合の基準となる寸法が「裁ち切り」である。
「上がり」の寸法と「裁ち切り」寸法が同じ場合もある。しかし、将来寸法を長く仕立てる事を想定する場合などは「裁ち切り」寸法を長くする。
例えば、身長160cmの人が着物を仕立てる場合、身丈が4尺3寸とする。しかし、その人の娘さんは背が高く身長が168cmある場合、裁ち切りを4尺3寸にすると将来娘さん用には身丈が足りなくて仕立てられなくなる。その場合は、身丈の「裁ち切り」を娘さんに合わせて4尺5寸として反物を裁ち、長い分は「内揚げ」として織り込むのである。
そうすれば、着物を解けば娘さん用に仕立てる事ができるのである。
つづく
