全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題
Ⅶ-83 得する街のゼミナール「きものの見分け方」(その25)
織物と言えば、紬と並んで帯地があります。紬と帯地は一見別物ですが、先にお話し致しました通り、先染めて織っていますので同じ「織物」です。帯地にも様々ありますが、代表的な西陣の袋帯についてお話し致します。
「良い帯とは何か」と言う命題に答えは一つではありません。しかし、その答えの一つに「手織り」と言うのがあります。
「手織りの帯」とは織り手が緯糸を一本一本杼で通して織った帯です。手仕事になりますのでとても時間が掛かります。機械で織る帯よりも手間と時間がかかり高価な帯になります。時間が掛かるから高価と言う訳ではなく、手織りには手織りの味、風合いがあります。これは機械では真似のできないものです。
では、手織りの味とは何かと問われますと、中々説明しづらいのです。
京都にいた時分、西陣の帯問屋さんに、
「手織りの帯と言うのは見て分かるものですか?」
と聞いたことがありました。
「そら、見たり触れたりしたら分かりまっせ。」
と答えていましたが、
「それはどう違うのですか? どこが違うのですか?」
と問うと、
「そりゃ~、ふわっとして手触りが違いますよ。」
と、何とも答えにならない答えだった。それでも、その人は確かに帯を見分ける事ができていた。
また、私の母はいつも着物を着ていたが、手織りの博多献上帯はとても締め易いと言っていた。博多献上は機械で織られるのがほとんどで手織りの帯はとても珍しい。博多帯は縦畝織と呼ばれる織り方で、難が出易いと言う。単純な献上柄では尚更の事、手織りでは難が出易く、クレームの基になるからだろうか、それとも技術者がいなくなったからだろうか、最近お目に掛かった事がない。
難の有る無しは別として、長年(70年間)着物を着ている母は昔締めた手織りの博多献上は、とても締め易いと言う。
手織りと機械織の帯は確かに違う。しかし、それを具体的に言葉では表現できない、と言うところだろう。これは、染の処でもお話し致しましたが「目利き」というもので、この目利きができれば着物を見分けられるのだが、とりあえずはテクニカルな見分け方を覚える事でしょう。
テクニカルな袋帯の見分け方として、「紋丈」と言うのがあります。この「紋丈」が袋帯の価値を左右していました。
今「左右していました」と過去形でお話ししましたが、じつはこの「紋丈」については、私が京都にいた40年前に教えられた物でした。しかし、今日技術革新が「紋丈」と言う概念を変化させているようにも思えます。それでも「紋丈」は西陣帯の本質的な概念ですので覚えておかれたらよろしいかと思います。
つづく