現代は地球温暖化の為に全国的に暑くなっていますが、私の感覚では昔は山形の５月はそれ程暑くはなく、まだ浴衣を着る時期ではないと思っていました。しかし、東京は５月になれば暑い日も多く三社祭の時には浴衣が着られていたのかもしれません。いくら祭りだからと言っても寒さに震えながら無理して浴衣を着ていたとは考えられませんから。

「山形で本格的に浴衣を着るのは梅雨明けからかな」とも思っていました。山形では以前は７月に入っても肌寒い日もありました。しかし、梅雨が明けると一気に暑さが増し、上述したように日本最高記録と成る程暑い日が続きます。しかし、盆が過ぎると涼しくなり、急速に秋に向かっていました。山形では短い暑い夏が浴衣の本当の季節だったと思います。しかし、これは他の地域とは違った尺度によるものです。

「自然人がいつから夏物を着るのか」と言う問いに答えようと思えば、日本全国一律に衣替えと言うのは合理的ではありません。

　私は、三社祭をもって衣替えの季節、と捉えるのはごく自然ではないかと思います。祭りをはじめ、その地方の季節感のある行事を境にすると言うのは季節を身近に感じられるのではないでしょうか。

　しかし、地方によって衣替えの時期が異なるのは不便も生じるでしょう。

　例えば、東北の人が九州で行われるお茶会に参加するとなれば、何を着て行って良いのか、いちいち調べなくてはなりません。また、東北ではまだ単衣の時期に薄物の着物を着ていく事にためらいを感じるかもしれません。遠距離ではなくても、極近隣の地域で目安となる祭りや行事の日付が微妙に違うと、単衣や薄物が混在してしまいます。そう言う意味では、衣替えの季節を全国的に統一する事に意味があるのでしょう。

　それでも私は「七月一日から」と言うのは何か無理を感じます。どうしても暦に頼った衣替えが必要だとすると、暦には節気と言うのがあります。

　節気は、一年を二十四に分けてそれぞれの季節を象徴した名前が付けられています。その節気を衣替えの節目とするのは相応しいのではないでしょうか。節気は西暦の上では毎年数日のズレがあります。例えば夏至（６月２１日頃）を夏物への衣替えとした場合、
「今年は６月２２日から夏物だね。」

と言う様に、季節に対する関心も深くなるように思えます。

　因みに、立夏（５月５日頃）が単衣への衣替え、夏至（６月２１日頃）が薄物への衣替え、白露（９月７日頃）が薄物から単衣に。そして寒露（１０月８日頃）に袷を、と言うのは実情に合っていると思うのですがどうでしょうか。

つづく